化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉(その1)
今のままのエネルギー消費を続ければ、今世紀中に世界の化石燃料は枯渇の危機を迎える
久保田 宏
東京工業大学名誉教授
今後の確認可採埋蔵量の増加は余り期待できないと考えるべきである
図1-1に示したBP社による確認可採埋蔵量の値は、当年の年末の値とされているだけでなく、国際的なエネルギー供給企業としての同社の利害関係を配慮した恣意的操作が入り得る値である。このことを承知の上で、同社の調査結果として与えられている各年末の確認可採埋蔵量の値と、図1-2に示す生産量の値から、次式を用いて、データ発表の当年の(正味の確認可採埋蔵量の増加)の値を計算し、その年次変化を図1-4に示した。
(見かけの確認可採埋蔵量の増加)
=(当年の確認可採埋蔵量の値)-(前年の確認可採埋蔵量の値)(1-1)
(正味の確認可採埋蔵量の増加)
=(見かけの確認可採埋蔵量の増加)+(当年の生産量の値) (1-2)
この図1-4では、2007年と2008年の石炭と2007年の天然ガスでの(正味の確認可採埋蔵量の増加)の値がマイナスになっている。何故、このようなデータが与えられるかは不明で、その絶対値には問題があることを承知の上で図1-4のデータについて考えてみる。
先ず、正味の増加量の値が、天然ガスで2008年に、石油で2011年に、やや、異常に大きくなっているが、これは、それぞれ、最近のシェールガスおよびシェールオイルの開発・利用への期待が、確認可採埋蔵量の増加の数値に反映されているためと考えられる。しかし、このシエールガス・オイルブームも、どうやら、一時的なものに止まり、その採掘コストを考えると、今後の確認可採埋蔵量の増加には殆どつながらない(文献1-2参照)と見るべきことをこの図1-4が示している。
図1-3に示したエネルギー資源種類別の可採年数の年次変化に見られるように、化石燃料の主役を占める石油では、依然として、可採年数の年次増加が続いている。これが、シェールオイルの開発・利用への期待から、石油はまだまだ使えるとする人々の主張の根拠になっていると言ってよい。しかしながら、可採埋蔵量の増加を加速させると期待されたシェールオイルの開発・利用が、単なる一時的なものと考えるべきであることが、図4-1から明らかにされた。したがって、今後、世界が協力してこの石油を主体とする化石燃料消費の増大を抑制しない限り、今世紀中に化石燃料資源の枯渇を招くことは必須と考えるべきである。
- 1-1.
- 日本エネルギー経済研究所編;「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2008 ~ 2013年版」、省エネルギーセンター、2008 ~ 2015年
- 1-2.
- 1-2. 田村八州夫、石井吉徳;石油文明はなぜ終わるか――低エネルギー社会への構造転換、東洋出版、2014 年