経済成長と温暖化対策の両立ーデカップリングは本当か?
デフレ脱却が日本の温室効果ガス削減の条件
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
日本、ドイツは製造業が成長しているが、金融・保険部門は共に落ち込みを見せている。英国のようにエネルギー消費が相対的に少ないが1人当たりGDPが高い部門が成長すれば、デカップリングも可能だが、日本とドイツでは製造業以外の分野の大きな成長は難しいようだ。長い金融街の歴史もなく、言語も金融の標準語の英語でない日本とドイツが金融を伸ばすのは難しい。情報通信分野も金融・保険分野の成長に引っ張られる部分があり、大きな成長は難しいように思える。
日本の経済成長の実現には製造業の成長が必要だ。2000年と11年の、ドイツ製造業の1次エネルギー消費量を比較すると、石油換算5133万トンが5495万トンに7%増加している。製造業のエネルギー効率の改善は簡単ではないということだ。経済成長を実現するには製造業の伸びが必要であるドイツ、日本のデカップリング実現は、節エネと1次エネルギー供給の低炭素化に大きく依存することになる。
ちなみに1990年を基準年にするとドイツが大きなCO2削減を実現したのは、東ドイツ併合により効率が大きく改善されたことと、CO2排出量の多い石炭の消費が大きく削減されたためだ。英国も国内炭鉱閉鎖と北海からの天然ガス供給によりエネルギー源の切り替えが行われており、90年を基準にするとCO2排出量は大きく削減されている。東欧諸国も90年の市場経済移行後大きくCO2を削減できた。EUが90年を基準年に設定する理由だ。
日本の2030年のエネルギーミックスでは、低炭素電源の比率が44%とされた。温室効果ガスを30年に向けて26%削減するためには、節エネ努力も必要になる。産業界が節エネを行うには設備更新などの新規投資が必要になるが、景気が低迷しデフレ経済であった過去20年間、製造業は設備投資額を削減し、借入金返済を優先した。設備更新が行わなければ、エネルギー効率の改善は難しい。そのためには、デフレ脱却がまず必要だ。デフレ脱却が日本の温室効果ガス排出削減を実現するための必要条件だ。