米国の自動車戦略~燃料電池自動車
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
新たなCAFE基準も燃料電池自動車の普及を後押し
ある自動車メーカー幹部は、「新たなCAFE基準が出され、燃費向上に厳しい規制がかけられている。我々は燃費のより良い車を、より多く市場で販売していかなければならない」と話していた。米国で販売される自動車には日本とは異なる自動車の燃費規制が適用されている。「CAFE:Corporate Average Fuel Economy=企業平均燃費」と呼ばれる燃費基準は、自動車メーカーが販売した車全体で平均燃費を算出し、それに規制をかけるというものだ。
1978年の新車から初めてCAFE基準がかけられ、1985年まで段階的に引き上げられた結果、大幅な燃費の向上につながった。その後、しばらく基準値はほとんど引き上げられなかったが、地球温暖化問題や原油価格の高騰などを背景に、オバマ政権は2009年5月、2012年から2016年まで毎年5%ずつ段階的に規制を強化する「新CAFE基準値」を発表した。2016年までに乗用車とライトトラックの合算で企業平均として1ガロン35.5マイル(1Lあたり約15.1km)と、2010年に比べて4割超の基準値の引き上げとなる。2012年から2014年にかけての3年間、自動車メーカーは基準値を上回る実績を上げている。
新たなCAFE基準が課せられる中、2017年頃には多くの自動車メーカーによるFCEVを販売する動きも見えている。水素供給装置の性能や安全性、信頼性などの課題を早期に解決し、2017年までに稼働できる水素ステーションの数や利便性がユーザーにとって期待できるものになれば、FCEVは米国、日本、欧州を中心にユーザーに選ばれる車になっていく可能性は高いのではないか。公共交通としてFCバスの利用、FCフォークリフトも市場を形成していくことも期待される。