米国の次世代エコカー開発(2)
全米100の「クリーンシティ」での代替燃料車の普及
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
全米100の自治体と連携してエネルギー省(DOE)が進める「Clean Cities」プロジェクトでは、排ガスを出さないEVやプラグインハイブリッド(PHV)などの電動自動車ほか、プロパンガス自動車や天然ガス自動車、バイオ燃料自動車なども含めた代替燃料車(AFV: alternative fuel vehicles)の普及により温暖化対策を推進している。
プロジェクトは1993年にスタートしているが、2006年以降クリーンシティでの代替燃料車の導入数は大きく増えている。2013年には59万1752台が導入されているが、その内訳は、プロパンガス自動車(全体の6%:3万5554台)、天然ガス自動車(14.1%:8万3261台)、エタノール混合車のE85(43.8%:25万9337台)、EVなど電動自動車(19.5%:11万5526台)、バイオディーゼル(16.6%:9万8028台)となっている。代替燃料車の導入により2013年は10億ガロンの石油を減らし、750万トンの温室効果ガス排出の削減ができたとして、2020年に25億ガロンの石油の低減を目標として掲げる。
クリーンシティでの代替燃料車の普及に必要なインフラ整備も進め、燃料供給ステーションの多様化も進んでいる。2013年までに2万2759か所の燃料供給ステーションが整備されているが、その内訳は、プロパンガス供給(10.9%:2956か所)、天然ガス供給(4.9%:1344か所)、E85供給(9.7%:2639か所)、EV充電(71.5%:1万9410か所)などで、2011年以降はEV充電ステーションの設置が大きなシェアを占めている。
また、全米のクリーンシティ指定自治体と国立公園局(NPS: National Park Service)が連携し、国立公園内の自然保護と大気汚染対策の観点から「Clean Cities National Park Initiative」プロジェクトを2010年に立ち上げ、国立公園内での代替燃料車の導入を推進している。例えば、北コロラド州のロッキー山脈国立公園では、プロパンガスのピックアップトラックとプラグインハイブリッド車が2台導入される一方、スタッフや一般客に対してアイドリングストップなどエコドライブの講習を行っている。カリフォルニア州のゴールデンゲート国立レクリエーションエリアでは、サンフランシスコ市と連携し、急速充電器を一般客にも開放し、公園内でのEVでの走行を推奨するなど9つのプロジェクトが進められている。
アメリカ全土の占める国立公園の面積は3.4%だが、すべての国立公園の面積を合計すると34万平方キロメートルになり、日本の国土面積(約37.8万平方キロメートル)にも匹敵する広さとなる。現在、全米の27の国立公園で代替燃料車プロジェクトが進行中だが、温暖化対策のみならず国立公園内の野生生物や文化的資産を守るという大義名分のもと代替燃料車の普及が拡がっていくと思われる。