高レベル放射性廃棄物地層処分の処分地選定
科学的有望地提示の前に、その「選び方」についての対話を
堀越 秀彦
国際環境経済研究所主席研究員
この問題はなかなか難しい。高レベル放射性廃棄物に対する国民の認知は高まってきており、処分の必要性も認識されつつあるとはいえ、多くの国民にとって地層処分は他人事であり、国や実施主体が情報を発信してもなかなか意識に残らない。それを国民の立場から言えば「知らされていなかった」ということになる(いささか勝手だが、そういうものだ)。それでいて、どうしても特定の地域名を“初めて”目にする瞬間がある。その瞬間に当該地域の選定が妥当なものだと認識されなければ冷静な対話は難しいだろう。そのためには選定手続の公正性と科学的適切さを確保し、あらかじめ理解と納得を得る必要がある。よって、特定の地域を示す“前に”、科学的有望地の「選び方」について、よくよく国民と対話することを推奨したいというのが本稿の主張である。
この点、平成26年12月より、総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 地層処分技術ワーキンググループ注3)が再開され、科学的有望地について検討されている。そこでは、何に対する適性をもって科学的有望地とするのか、使用するデータはどのようなものであるべきか、適性の高低をどのような要件・基準で判断するのかなど、「選び方」に関する事項が詳細に検討されている。特定の地域を示す前に、ここでの議論の内容や検討結果を世に問うことが、その後の冷静な対話に役立つだろう。
追記
地層処分の分野に限ったことではないが、リスクに係る一般向けの広報素材は、往々にしてリスクの説明よりも対策の説明ばかりに重きが置かれ、かえって理解しづらい部分があった。(例えば、地下水による放射性物質の移行(地下水シナリオ)をよく説明せずに、ベントナイトの遮水性や吸着性ばかりを説明してしまう等)
地層処分技術ワーキンググループでは、最終処分施設に求められる地質環境特性についても議論されているのだが、そこでは「想定されるリスク」をスタートラインとして、そこから要件、基準等が考察されている。議論は専門的ながら、筋道がわかりやすい。このようなロジックを咀嚼し、一般向けの広報においても活用すべきであると感じた。