放射線と放射性物質(その4) 被ばくを防ぐ


国際環境経済研究所主席研究員

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(前回の解説は、「放射線と放射性物質(その3) 自然放射線と主な放射性物質」をご覧ください)

7.放射線の種類と外部被ばくからの防護

放射線の種類と浸透力

 放射線にはいくつか種類がある。太陽から地球に降り注ぐ紫外線や可視光線、赤外線も広い意味で放射線である。人体への影響が少ないので紫外線を別にしてこれらが問題になることは少ない。問題なのは以下に述べる4種類、高エネルギー電磁波であるガンマ線およびX線と、電子や中性子、アルファ線など高エネルギーの粒子線である。それら様々な放射線の遮蔽方法を図に示す。
 
1) 放射線の種類
(1) ガンマ線(γ線)、X線

 エネルギーの高い(波長の短い)光線のこと。波長が極めて短く目に見えない。エネルギーが高いほど透過性が強い。電子の状態の遷移によって発生する電磁波がX線、原子核の状態の遷移によって発生するのがγ線である。
 遮蔽には鉛や鉄、コンクリートを用いる。下記の(2)以降に示すベータ崩壊、アルファ崩壊および中性子線放出の結果、原子核が励起状態(興奮状態)になるが、そこから基底状態(沈静化)に移る(遷移という)ときにそのエネルギーをγ線として放出する。
 また原子核から最も近い軌道を回る電子を取り込んで核が安定化する軌道電子捕獲(エレクトロン・キャプチャ=EC)という現象を起こす放射性原子核があり、その場合に放出する励起エネルギーは上記の定義からγ線でなくX線である

 なお、健康診断や空港の手荷物検査などで用いられているX線発生装置では、高速の電子をある種の金属からなる陽極に衝突させることでX線を発生させる。原子核の周りを回る電子の遷移の結果生じるX線を特性X線といい一定の波長になる。一方、陰極から照射された電子が陽極の原子核の電場により減速、散乱して発生するX線を制動X線といい、その波長は光の波長のように連続で分布する。

(2) ベータ崩壊(β線 β=電子線、β=陽電子線、EC=軌道電子捕獲)
 β線自体は微粒子であり1~1.5cmの厚さのガラスやプラスチックで十分遮蔽可能である。ただし、β線放出と同時に励起した原子核が安定する過程でγ線やX線を放出する。セシウム137の外部放射線被ばくはこのγ線である。

(3) アルファ崩壊(α線は高速度のヘリウム原子核)
 α崩壊は原子番号の比較的高い原子核に起きる。核分裂で生成する放射性物質ではほとんどα崩壊は存在しない。α粒子そのものは最大飛距離 数cmで、直接触ったりしなければ被ばくの心配はない。紙1枚で遮蔽可能である。β線と同様にγ線を同時に放出する。

(4) 中性子線
 核分裂を起こす重い元素から放出され、γ線を伴う。遮蔽はγ線防護と同じである。中性子は水素原子と反応して重水素になりやすい。中性子そのものは半減期14.8分で水素原子と電子になる。核燃料や原子炉以外の原因で中性子線に被ばくすることはない。

2) 放射線外部被ばく防護の三原則
 からだを放射線の内部被ばくから防ぐためには、放射性物質を体内に取り込まないようにするしかないが、外部からの被ばくは、距離・遮蔽・時間の三原則で防護する。「光」をイメージすると分かりやすい。

放射線被ばくを減らすための3原則

(1) 線源から距離を置く(光=光源が遠くなると暗くなる)
 距離の二乗に反比例して被ばく量は減少する。

(2) 遮蔽による防護(光=遮ると見えなくなる)
 α線は紙1枚、β線はガラス1枚、γ線は鉛のような金属で遮蔽する。

(3) 被ばく時間を短く(光=長時間日光にさらされると日焼けする)
 どうしても線源に近づかなければならない場合はできるだけ短時間にする。

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