MENUMENU

放射線と放射性物質(その4) 被ばくを防ぐ


国際環境経済研究所主席研究員


印刷用ページ

8.被ばく対策

1) 放射線被ばくにより何が起き、何が危険か

被ばく線量と身体各部の状態

 放射線の人体への影響は、遺伝子を含む細胞の構成成分の直接破壊もさることながら、体内細胞の主成分である水(人体の60%は水)が放射線のエネルギーにより分解して水酸基などの遊離基や活性酸素、過酸化水素など、細胞の成分に障害を与える成分を生成させ、細胞を傷つけるためであるとされる。

 細胞内の水の分解反応を起こす要因には、喫煙や飲酒、大気汚染、レントゲン、精神的ストレスなど多くの要因があり、放射線もその一部である。
 これらの身体への常態的ストレスに対して、生体には修復機能が備わり健康を維持しているが、その機能を上回るストレスに曝されることによって健康に支障を起こす。放射線を大量に被ばくすると表に示すような症状を引き起こし最悪の場合には死亡する。

2) 主な放射性物質の代謝と人体への影響
(1) セシウム134, 137

 セシウムは、食塩の主成分ナトリウムおよび生物の必須元素で植物の生育に欠かせないカリウムと似た性質を持つアルカリ金属である。特にカリウムと挙動が類似しており、60%が筋肉に、次いで内臓、脳の順に取り込まれる。生物学的半減期は140日で、体内に取り込まれたセシウムが半分になるのに3か月半かかる。水中ではイオンの形で存在すると考えられ腎臓を経由して排出される。

(2) ヨウ素131など
 ヨウ素は恒温動物の細胞活動を活性化させる甲状腺ホルモンの必須成分であり海藻類に多く含まれ、経口摂取後甲状腺ホルモンを作る組織である甲状腺に蓄積する。生物は安定なヨウ素と放射性ヨウ素を区別することができない。放射性ヨウ素は成人では摂取量の30%、成長期にある幼児の場合には50%が甲状腺に沈着してしまう。海藻など安定なヨウ素を多く含む食事をすると沈着率は著しく減少する。

安定ヨウ素剤の投与時間と効果

 放射性ヨウ素は半減期が8日と短いので、被ばくが懸念される場合には予防的にヨウ素剤 (KI=ヨウ化カリウム) を投与して甲状腺を安定なヨウ素で飽和させておき、取り込まれる放射性ヨウ素を少なくして影響を軽減するが服用は1度で良い(表)。

短期間で放射性ヨウ素の影響が軽減することから、新たな臨界による汚染がない限りヨウ素剤を再服用する必要はない。また、必要以上にヨウ素を摂取すると甲状腺機能低下症の発症など健康を害する場合がある。

 古いデータで昔の単位であるが、甲状腺疾患検査で投与された放射性ヨウ素により甲状腺腫瘍が発生した症例として、最小摂取量が大人15mCi (Bqに換算すると5億6千万Bq)、小児2mCi (7千万Bq)であった。また、甲状腺炎や繊維化が発症した摂取量は成人で1~7mCi (37百万~2億6千万Bq) と言うことである。

(3) ストロンチウム90
 ストロンチウムは、マグネシウム、カルシウム、バリウムと同族のアルカリ土類金属で挙動が類似しており、ラジウム、プルトニウムなどの重金属系の核種と同様に骨に蓄積する傾向がある。血液の変化、骨腫瘍、白血病の発症の原因になる懸念がある。水中で炭酸塩などの形で不溶化すると考えられ、海に出ると海底の泥に移行する。

 セシウムと比べ一旦体内に取り込まれると排出されにくいので警戒が必要である。頻繁にシルクロード取材などで中国を訪れていた広島の原爆被ばく者でもある平山郁夫画伯や、中国内陸部でテレビドラマの撮影を行った女優が白血病で亡くなっているが、ストロンチウム90による体内被ばくが原因の可能性がある。

(4) 炭素14, カリウム40、ラジウム226、ラドン
 自然由来の放射性物質がいくつか存在する。炭素14は有機物であればあらゆるものに同じ確率で取りこまれる。肥料の3要素のひとつカリウムにも放射性カリウムがあり、前述のように我々は常に自然由来のこれら放射性物質を一定量取り込み被ばくしている。ラドンによる被ばくは自然由来の半分を占める。希ガスと呼ばれる気体であり室内換気により被ばくを減らすことができる。

(5) 体内への蓄積に注意が必要な放射性物質
 以上、セシウムは体内に取り込まれても数ヶ月で排出されるが、ストロンチウムやラジウムは骨に蓄積するので排出に時間がかかる。セシウムよりもストロンチウムに注意を払う必要があるが、文部科学省の発表注1)によると、福島の事故によるストロンチウム汚染の程度は軽微なようである。

注1)
例えば「土壌の核種分析結果
※ 相馬市の2.4E+3、大熊町の1.5E+3、高度汚染地区の双葉町に二か所、浪江町に四か所E+3があります。E+3 とは、10の3乗、つまり1,000ですから、相馬市は2,400Bq/m2。その他の測定値はE+1~E+2がほとんどなので数10から数百Bq/m2、ということです。つまり、ストロンチウムの沈着量は、セシウム137の沈着量の1000分の1程度です。