電力会社が再エネの接続を保留

固定価格買い取り制度(FIT)の本質的欠陥


国際環境経済研究所前所長

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 負担の構造を模式図で描けば図の通りである。発電の単位(1kWh)当たりの買い取り単価が下がることは事実だ。しかし、再生可能エネルギー発電事業者は、20年にわたって電力を売ることで収入が得られることが保障されており、設備認定を受けた年に認められた価格から買い取り価格が下がることはない。したがって、消費者に課徴金として転嫁されていく負担は、図のように積み木のように積み上ることになる。

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 この累積構造が理解されていないだけでなく、ひどい場合にはさらに誤解が生じている。

 電力会社が再エネ電力の買い取りを負担することになっていて、消費者には負担が回ってこないと理解している人もいるのだ。往々にして、電力会社が自分のリストラ嫌さに反対しているようにメディアやネット上で伝えられているが、課徴金が自らに降りかかってきていることを知らない消費者が多いのだろう。

 みんな電気料金の請求書を見てみればよい。この課徴金は消費税の外税のように別建てで請求されている。消費者が支払った課徴金は、大手電力会社の懐に入るのではない。再生可能エネルギー発電事業者の収入になっているのだ。

誰の責任か

 ここで冒頭説明した、接続申請への回答保留の問題に話を戻そう。今回の混乱は誰の責任なのか。

 非難や怒りの声を上げているのは、主に個人や中小の事業主体だ。実は大手の再エネ発電事業者にはあまり影響がない。固定価格買い取り制度は「早い者勝ち」が原則の制度である。大手事業者は、国から早めに設備認定を受け、系統接続するために電力会社からの「供給承諾」を既に受けているからだ。中には、固定価格買い取り制度よりも前から再生可能エネルギーを導入しようとしていたプロの事業者もいる。プロ事業者らは、系統の容量がいずれネックになると十分に認識しており、今回の事態に至ることも想像していただろう。だからこそ、プロの事業者らは容量が限界を迎える前にできるだけ早めに供給承諾を受け、接続を済ませている。

 非難の声を上げる個人や中小の事業主体はどうか。再エネ事業に参入するに当たり、悪徳ブローカーのような手合いから「濡れ手で粟」のような話を聞かされたのか。実際にどのようなリスクがあるか、十分に研究したうえで投資判断をすることは事業の基本である。系統連系の可否に関するリスクが制度上あることを、電力会社が事前に説明していなかった場合には別だが、説明された上で投資判断したからには、投資家側にも責任はある(法人や事業として相当の規模で行おうとする者には事前に説明されている。一部家庭用などの場合で、事前の接続検討のプロセスを飛ばして直接接続を申し込むようなケースは説明のチャンスがない場合もある)。「この投資信託は元本割れのリスクがあります」と注意書きのある金融商品を買って、うまくいかずに損したからといって元本を補償しろというのは通らないだろう。

 ただ、「早い者勝ち」ルールがおかしいというのであれば別だ。先に系統連系容量を押さえてしまった事業者に対し、「自分たちを押し出しているのはあなたたちだから、少しその容量を分けてくれ」と訴えることにはそれなりの理由がある。

 なぜなら、「供給承諾」を得たにもかかわらず、太陽電池パネルの値下がり(事業者の利益分が増える)を待っていて実際に接続しないケースなど「電気事業」を営んでいるとは言えないような事例が存在するからだ。こうした事業者に対し、承諾や認定を取り消すなどの措置を取ることは公平に叶うだろう。資源エネルギー庁もそうした方針でこの問題に臨むようだ。

 政府には全く責任はないのか。次の表は制度導入を検討した「再生可能エネルギーの全量買い取りに関するプロジェクトチーム」が、2010年3月に開かれた会合で検討した資料の一部だ。

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