河野太郎議員の電力批判、「スマートではないメーター」への疑問
過大な機能を搭載すればかえってメタボなメーターに
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員
需要家の乗り換え手続きについては、目下、関係者の間で議論が行われている最中である。実際に担当している電力関係者に確認したところ、新電力、資源エネルギー庁、有識者(弁護士)を交えて議論しているが、なりすましの対策は特に行わない前提で議論を進めているとのことであり、このブログの指摘は何を指しての批判なのかわからないとのことであった。
そして、議員が提案されているように、スマートメーターの全戸屋内設置をもってなりすまし対策とするのは、全面自由化が2年後に開始されることを考えれば時間軸が現実的ではないので、筆者もこの批判の意図は理解できなかった。
検針員が見て回る必要はないので、スマートメーターは屋内設置でよい、との主張はその通りである。検針頻度の少ない欧州では屋内設置が主流であるし、雨風をしのぐためのスペックが不要になればコストダウンも可能だろう。
しかし日本では現在、数千万軒の家庭が屋外にメーターを設置しており、屋内にメーターを移すのであれば配線改修工事が必要になる。莫大な改修工事のコストと時間をどう考えるのか。また、木造であれば良いが鉄筋の家などでは通信データが飛びづらくなり何らかの対策を講じる必要が生じる可能性もある。議員が指摘する「現在の通信環境」が携帯電話の電波であるとすれば、いまのスマートメーターの通信方式よりコスト高になってしまう。そういった現場の実態を踏まえた検討もされた上での発言なのか、このブログからは明らかではない。「サボタージュを推奨するのか」と議員には言われそうだが、きちんと議論を尽くすべき論点ではないだろうか。
自由化による消費者利益を最大化するためには、現場の実態を踏まえ、トータルで見て最小の消費者負担で、最大限の消費者ニーズに応じるという観点から、冷静な検討と議論をする必要がある。河野議員には広い国民の代表として、現場の実態を見て幅広い関係者の情報に耳を傾け、公平中立な議論を促す「行司役」となっていただければと思う。