環境と経済が両立に向かう『土壌汚染対策』とは(その9)
土壌汚染対策法の改正に向けた提言(2)
光成 美紀
株式会社FINEV(ファインブ)代表取締役
さらに具体的には、以下のような仕組みの導入も提言したいと思います。
国際的に自然資本への関心も高まり、環境配慮を進めながら事業やプロジェクトを進める動きは今後も継続されるでしょう。その中で、どのくらい環境保全を進めているかを定量的に評価する重要性も高まっています。
日本では土壌汚染対策法の対象が限定的であり、大部分の土壌汚染対策は民間で行われてきたため、国全体で汚染された土地の再生がどの程度行われているのか、その統計データもありません。今後、国際的にも日本の環境への取り組みをアピールするうえでも、国内で浄化が進められた土地の状況が把握できていないことは説得力に欠けることにもなりかねません。
したがって、土地の環境情報として調査を行い、汚染の有無や浄化を実施し、すでに汚染がない状態である等、その状況を不動産情報として引き継ぐ仕組みの導入も求められると考えます。
また、土地の浄化を進めるための資金には、現在海外でも急速に成長しているグリーンボンド(グリーン債券)等を活用し、浄化後の環境状況を評価していく仕組みも活用が期待されます。これらの取組は、将来的に日本から海外への政策パッケージとしての輸出も可能であると思われます。
こうした取り組みを、特区等を活用して実施し、2020年のオリンピック開発にもつなげていくことが国内外への普及推進にも有用であると考えます。
(参考)実施計画に向けた具体的提案として
【浄化済のグリーン土地(不動産)ラベル】
建物の環境配慮についてはCASBEEなどの認証制度があるが、土地の浄化及び建物を一体としたグリーン不動産に関する証書やラベルを策定し、土壌汚染の状況に応じたラベルを策定する。たとえば、形質変更時要届出区域の土地においても、一定の利用条件に基づくラベルによる分類を行い、その条件のもと利用できる土地として、土地利用証書を発行する。
【グリーンボンドの活用】
土壌汚染の浄化及び開発時、開発後の環境配慮等の指標を整理し、グリーンボンド(環境配慮型債券)発行に向けたガイドラインを策定する。今後の国内グリーンボンドの普及に資する仕組みを構築する。
【国家戦略特区の活用】
東京オリンピックに向けた整備地区に加え、湾岸地域の工場跡地、インフラ整備等の開発を推進する地域に、軽微な汚染を管理しながら土地開発を進める仕組みを導入し、上記グリーンボンドやグリーン土地のラベルを組み合わせ、汚染土地再生の枠組みを確立する。その際、費用便益評価等の効果検証、及び土壌浄化、開発等における課題整理を含めた事業性評価を行う。