欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その5)


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授

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ガス供給源とルートの多角化

 第2にガス供給源とルートの多角化である。現在、EUへのガス供給源はロシア、ノルウェー、北アフリカであるが、これに加え、米国からのシェールガス輸入を含むLNG輸入拡大、更にカスピ海地域や地中海地域のガスパイプラインの拡大を目指すとしている。

 特にガスパイプラインルートの多様化についてはロシアとの間にせめぎあいがある。ロシアはウクライナを経由しないEUへのガス供給ルートを確保すべく、ドイツとの間でノルドストリームを作ったが、トルコ、ブルガリアを経由するサウスストリーム計画を進めている。しかしパイプラインに対するガスプロムの独占的地位がEUの競争法規に抵触することに加え、ロシア依存を維持することにもなるため、欧州委員会はアゼルバイジャンからのガス供給のためのサザン・コリドー(南回廊)計画を推進しようとしている。今回の戦略案ではアゼルバイジャンに加え,トルクメニスタン,イラク,制裁が解除されることを想定してイランも供給ソースに加えているところが注目される。最近、両方の計画が通過ルートとして想定しているブルガリアは欧州委員会、米国からの批判を受けてサウスストリームの工事を中断したが、ブルガリアの中に親露派、親EU派がおり、先行きは不透明だ。他方、6月末にクリミア編入後、初の西欧諸国への公式訪問先となるオーストリアで、プーチン大統領はフィッシャー墺大統領との間でサウスストリームをオーストリアまで伸ばすと契約に署名した。西欧諸国の中でも親露的なオーストリアでロシア依存低下に向けた動きをかく乱した形であり、早速、米国大使館が不快感を表明している。

サウスストリームとサザンコリドー

サウスストリームとサザンコリドー

自国エネルギー源の開発

 第3に自国エネルギー源の開発である。再生可能エネルギーについては「ノーリグレットオプションであるが、そのコストと域内市場へのインパクトが懸念材料であった。再生可能エネルギーの大規模な導入のためにはよりスマートなグリッドとエネルギー貯蔵の新たな解決策が必要である。地域レベルでのキャパシティメカニズムも必要かもしれない。環境保全とエネルギーに関する新たな国家補助ガイドラインは、各国の2020年の再生可能エネルギー目標の達成をより費用対効果の高いものとすることに役立つ」と書かれている。

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