これでよいのか日本!
グラフに見る石油・ガス史上最高値の時代と日本
桝本 晃章
国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長
そんな状況下、日本は、石油・天然ガスの消費が増えている
2011年3月の巨大津波によって引き金を引かれた福島原子力事故の影響によって、現在全ての原子力発電は稼働していない。動いていない原子力発電欠落分を各電力会社は、古い火力発電ユニットを整備して動かしたり、既存火力をフル稼働させたりして補っている。当然のこととして、燃料消費量は、大きく増加している。
発電用燃料消費量について、2010年度とその後(2011~2013年度平均値)を比較すると、石油:2.3倍、石炭:42%増、LNG:32%増となっている。表―2はそれを示したものだ。
発電用燃料費は二倍以上に
以上の通りの状況は、当然のこととして、発電用燃料費の大幅増加をもたらしている。北海道から九州までの9電力会社の燃料費合計で見ると、2010年度:3.66兆円だったが、2013年度には、7.79兆円と2倍を超える大幅増加となっている。良くマクロ的に語られる通り、原子力発電の欠落は、発電用燃料の消費増加をもたらし、燃料費の増加額は年間3兆円を超えているのだ。この影響により、日本の貿易バランスは、この6月で、23か月連続の赤字となっている。
一方、発電用燃料費の急増は、結果的に、電気料金の値上げと言う形で、電力消費者の負担増加となっている。
隠れた負担:電力会社の赤字決算
しかし、原子力発電欠落の影響の実情は、電力料金値上げだけに留まらない。電力会社の赤字と言う形で隠れてもいるのだ。因みに、電力9社の経常損益を見ると、24年度合計:1.44兆円の赤字(9社全て)、25年度:赤字6社計・4,893億円となっている。
改めて、問いたい。“日本はこれでよいのか?”
以上、2014年版BP統計に始まり、改めて、この歴史的エネルギー高価格時代に原子力発電を稼働させず巨額な燃料費を支払っている日本の姿を概観してみた。
三年前の東日本大震災の巨大津波が引き金となって福島第一原子力事故が発生した。福島を中心に、未だに多くの方々が自宅に戻れず避難生活を余儀なくされている。
一方で、福島事故の経験も踏まえ、各原子力発電所では安全対策も高められてきている。再稼働のため、10基の原子炉の安全性評価申請が提出されてから、既に、一年が経過した。その後、現在までに安全審査申請済みの原子炉は計19基に及んでいる。しかし、一向に審査の具体的進捗は見られない。
日本は、本当にこれでよいのだろうか。皆さんに問いかけたい。
2014年7月10日