久しぶりのボン(その2)

-省エネ専門家会合に出席-


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授

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 一番目の点は私がIEAの国別審査課長をしていた頃から各国エネルギー審査で強調してきた点である。省エネは費用対効果の高い施策であるにもかかわらず、多くの国で政治的により「セクシー」な再生可能エネルギーに相対的に高いウェイトが置かれている傾向が見られた。今回の専門家会合では途上国においても同様な傾向があるとのコメントもあった。地味ではあるがエネルギー安全保障、温暖化防止、コストの面で優れた省エネのプロファイルをもっと上げるべきだと思う。

 最後から二番目の点も重要だ。議論の中で資金メカニズム、技術メカニズムが途上国の再生可能エネルギー、省エネ普及につながるためには、timely, integrated, tailor-made and affordable であることが必要との指摘があった。かつてCDMの手続きを交渉した際、現場から遊離した交渉官達がよってたかって厳密さを求めた結果、非常に複雑で時間のかかるものになってしまった。資金メカニズム、技術メカニズムは現場におけるニーズが実現するような現実的なものでなければならない。

 しかし、上記のサマリーの中で私が特に強調したかったのは実は最後の点である。私自身、APECや東アジアサミットのプロセスで省エネに関する国際協力を推進してきた。IPEEC(国際省エネ協力パートナーシップ)も2008年の洞爺湖のG8プロセスの中で種をまいてきたものである。下の図はIEAのプレゼンの中に含まれていた省エネ協力に関する既存の国際イニシアティブのリストである。文字が小さく読みにくいだろうが、いちいち判読していただく必要はない。要するに省エネの色々な分野でこれだけ色々なイニシアティブがあるということである。

省エネに関する国際協力イニシアティブ(出所WRI)

 私がこの専門家会合のファシリテーターを引き受ける際、「省エネ政策を実効有らしめるためには、結局は各国の自助努力が必要。この会合の『成果』として国連の場で省エネに関する新たな協力イニシアティブを立ち上げるという議論は、屋上屋を架するものでしかなく、絶対に避けるべき」と思っていた。