私的京都議定書始末記(その41)

-土壇場の調整-


国際環境経済研究所主席研究員、東京大学公共政策大学院特任教授

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CMP

Calls for a conclusion as soon as possible of the negotiation for a second commitment period of the Kyoto Protocol, pursuant to decision 1/CMP.1;

Recognizes the urgency of this task in order to avoid any gap between the 1st and 2nd commitment period of the Kyoto Protocol

Takes note of quantified economy-wide emission reduction targets to be implemented by Annex I Parties as communicated and contained in document UNFCCC/KP/AWG/2010/INF 2;

Recognizes that further work is needed to translate these emission reduction targets to quantified economy wide limitation or reduction commitments

 1/CMP.1 とはAWG-KPの設置根拠となったCMP決定のことである。

 もとより、最終的なCOP決定、CMP決定はもっと大部なものになる。しかし最ももめる論点はこの数パラグラフに集約されており、ここで少人数会合の合意が得られれば、それが全体の決定文に差し込まれるということである。

AWG-LCAの交渉成果の法的形式と京都第二約束期間

 議論は行きつ戻りつしたのだが、大きな議論になったのがAWG-LCAの交渉成果の法的形式(COP決定パラ①)と京都第二約束期間の方向性(CMP決定パラ①、②)である。COP決定原案ではAWG-LCAの成果として an agreed legal outcome という表現が使われている。EUは第二約束期間を容認する条件としてAWG-LCAでパラレルな法的枠組みができることをあげており、この表現はEUにとって非常に重要なものであった。しかし予想されたように中国、インドはAWG-LCAでの交渉成果の法的形式をプレジャッジすることは認められないと強く反対した。米国も先進国と途上国の法的義務のパラレリズムが保証されなければ「法的成果」と書くことに反対した。交渉がもめた場合、既存の合意の表現に戻るのは常套手段である。結局バリ行動計画の文言がそのまま繰り返されることになった。

Agree that the AWG-LCA shall aim to complete its work on an agreed outcome under the Bali Action Plan and have its results adopted by the COP as early as possible.

 京都第二約束期間を容認することでAWG-LCAでの法的成果に道筋をつけるというのがEUの戦略であったが、あえなく失敗したということだ。

 他方、CMP決定については、中国、南ア等が現行案パラ①、②はAWG-KPの設置根拠となった1/CMP.1 よりも更に後退しており、1/CMP.1 にならった表現とすべきと主張した。途上国は京都第二約束期間設定に向けてもっと踏み込んだ表現にしたかったであろうが、AWG-LCAの成果についてバリ行動計画の文言をそのままコピーする一方で、京都第二約束期間については前に進めようというのではEUも含め先進国が受け入れるはずがない。こちらも既存合意文書の文言をコピーすることとなった。CMP決定パラ①、②を一緒にし、以下のような表現になった。

Agrees that the AWG-KP shall aim to complete its work and have its results adopted by the CMP of the KP as early as possible and in time to ensure that there is no gap between the first and second commitment periods.

 要するにAWG-LCAもAWG-KPの2トラックアプローチを継続し、結論は先延ばしにしたということだった。

先進国・途上国の緩和目標、緩和行動のアンカリング

 いわゆるアンカリングの議論は紛糾した。COP決定のパラ②で先進国を米国とそれ以外に分け、CMP決定のパラ③でAWG-KPのペーパーにまとめられた京都締約先進国の中期目標をテークノートするという原案は、第二約束期間における目標設定を強く予断させるものであり、第二約束期間に入ることを拒否する日本、ロシアにとって到底、受け入れられるものではない。