「グリーン?なダボス?」
菊川 人吾
国際環境経済研究所主席研究員
1970年代はじめから活動している世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、いわゆるダボス会議が今年も例年同様1月後半に開催された。今年のダボス会議は日本にとって大きな意義となるものだったであろう。歴史あるダボス会議において初めて日本の首相がオープニングスピーチを行ったからである。今年は第一次世界大戦勃発の1914年から100年ということでそうした視点からの問題提起もあったに思う。注1)
そうした複雑な論点を有したダボスであったが、安倍総理と5閣僚がダボスを訪れた日はいずれも晴天となった。筆者自身もその職務上ダボス会議に参加する閣僚随行といった業務で訪問するのは5回目だがこんなに晴れたのは記憶にない。ダボスに上がって行く手前の村がハイジで有名なマイエンフェルトだが(写真1)のように快晴だった。写真の山々はいわゆるハイジの山小屋(観光名所)があるところだが、その麓を総理一行の乗ったスイス鉄道がダボスまで駆け抜けた。さぞかし、絶景の「車窓から」であっただろう。
こうした環境の中で開催されるがゆえか、ダボス会議自体も「環境」をテーマにしたセッションも多く、街そのものも環境配慮を謳っている。例えば、グリーンダボス車という登録がないとダボス会議一体の域内を走れないことになっているのだが、その基準は若干お粗末注2)で、しかも、基準適合しない車は走れないのではなく、単に迂回しなければならないだけで、その分余計に走らなくてはならない(写真2)。となると、全体としては環境を悪化させているだけにしかすぎないと思われるのだが、この辺りが欧州型の環境対策とフランクに言えるのか「偽善」又は「取り繕い」といった言葉がお似合いとも言えよう。注3)
こうしたご愛嬌のグリーンなダボスであるが、今年のダボスでは大きくグリーンに影響を与えるかもしれない記者発表があった。
1月24日、米国フローマンUSTRを筆頭に14カ国の閣僚ないし大使クラスが勢揃いの上で記者会見を行い、環境物品に関する自由化交渉への準備を始めることのコミットメントを発表したのである。注4)(写真4)