メタンハイドレートの試掘に成功

メガソーラーのためにFIT 制度を適用する必要性は完全に無くなった


東京工業大学名誉教授

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 これに対して、現在、FIT 制度を適用して、その利用・普及が図られている国産の再生可能エネルギーとして、現在、最も大きな注目を集めている太陽光発電(非住宅のメガソーラー)について、上記同様(3)式で定義される(有効自然エネルギー(国産エネルギー)利用比率 i )の値を求めてみた。ただし、メガソーラーの生産電力の買取価格は、FIT 制度施行当初の 42 円/kWh でなくて、最近引き下げられた値 37.8 円/kWh とした。結果は、「補遺」 に示すように、国産のメガソーラーを用いた場合の i = 60.1 % と計算される。すなわち、上記したように朝日新聞により、「実用化はまだ先」と決めつけられたメタンハイドレートの(有効国産エネルギー利用比率 i )の下限値 87.4 % よりもかなり小さいi の値を与える太陽光発電(メガソーラー)が、現在の国産エネルギーとして、その利用・普及のための FIT制度の適用による政策的支援を受けていることになる。
 次いで、少し視点を変えて、国産エネルギーとしてのメタンハイドレートからのメタンガスを火力発電用の燃料として用いた場合の発電コストを計算し、この値をメガソーラーの発電コストと比較してみた。国内の一般電気事業者(電力会社)の火力発電の燃料種類別の発電量と燃料消費量のデータ(2009年度、文献2 )からLNG 火力の発電効率は 45.1 % と計算される。この値が、海底のメタンハイドレートからのメタンガスを用いた場合にも適用できるとすると、

 (単位発電量 kWh の生産当たりに必要なメタンガス量 kg)
  =(860 kcal/kWh)/(火力発電のエネルギー効率 0.451)
   /(メタンガスの発熱量 13,102 kcal/kg)=0.1467 kg/kWh

となる。この値に、JOGMEC による

 (メタンハイドレートからのメタンガスの生産原価の試算値)
  =(メタンの生産原価 46 ~174 円/Nm3)×(1.40 Nm3/kg)
  =64.4 ~ 234.6 円/kg

を乗じて、このメタンガス使用の火力発電での 

 (発電コスト(燃料代))
  =(0.1467 kg/kWh)×(64.4 ~ 234.6 円/kg)=9.45 ~ 35.7 円/kWh

となる。
 この値は、上記したように、まだ調査段階での生産原価の試算値から計算した不確定要因を含む推定値である。この値を2010 年度のLNGの輸入CIF 価格 50.114 円/kgから同様にして計算した発電コスト(燃料代)7.35 円/kWh と較べると、実用化のメドをつけるためには、もう一段の生産技術の開発が求められることになるが、エネルギー安全保障の観点からみた将来の国産エネルギー資源としてのメタンハイドレートに、一定の期待を持たせてくれると言ってもよいであろう。
 ここで大きな社会問題とならなければならないのは、上記で計算されたメタンハイドレートからのメタンガスを燃料として用いた火力発電のコスト(燃料代)の推定値の上限 35.7 円/kWh よりも高い 37.8 円/kWh が、FIT 制度によるメガソーラー電力の買取価格とされていることである。現状の輸入LNG 使用での火力発電コスト(燃料代)の 5 倍近くもするこのFIT制度の買取価格で、国民に大きな経済的負担をかけてメガソーラーの利用・普及が進められているのは、このメガソーラーの電力が、これまで国産エネルギーとして位置付けられてきた原発電力の代替とならなければならないとしているからである。しかし、将来、同じ国産エネルギーとして、より安価なメタンハイドレートの利用が期待できるのであれば、もはや、FIT 制度を適用したメガソーラーの利用・普及を図る必要性は全く存在しなくなる。それだけではなく、日本経済の厳しい現状を考えるとき、筆者が以前から強く主張しているように、原発代替には、当面、最も安価な石炭火力を使用すればよいから、メガソーラーをはじめとする自然エネルギー発電は、FIT 制度の適用なしで利用・普及できる日まで待つべきである(文献3)。
 メタンハイドレートの利用についても同じことが言える。将来の国産エネルギー資源の確保のために、その生産原価を低下させるとともに生産可能量を増加させるための基礎的な技術開発の研究は、これからも地道に続けるべきであろう。しかし、現状の安価な輸入化石燃料の代替として、経済性を無視して、その実用化を急ぐ必要はどこにもない。将来、輸入化石燃料価格が高騰して、この海底メタンを利用しなければならなくなるかもしれない明日、いや明後日が来るまで、この貴重な国産資源を子孫のために大事にとっておきたい。いま、急ぐべきことは、電気料金の値上げで、国民の生活と産業にマイナスの影響しか与えない再生可能エネルギーに対するFIT 制度を一日でも早く廃止することである。今回の愛知県沖海底からの世界初のメタンガス採取の成功が、この余りにも不条理な FIT 制度の廃止のきっかけになることを祈って止まない。

引用文献;
 
1.
久保田宏;「脱化石燃料社会―「低炭素社会へ」からの変換が日本を救い地球を救う」、化学工業日報社、2011年
2.
日本エネルギー経済研究所編;「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2012年版」、省エネルギーセンター
3.
久保田 宏;科学技術の視点から原発に依存しないエネルギー政策を創る、日刊工業新聞社、2012年