最終話(3の2)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
加納 雄大
在ウィーン国際機関日本政府代表部 公使
3.日本の取り組み(2):アフリカにおける低炭素成長・気候変動に強靱な開発戦略
地球温暖化対策において、アジアと並ぶ重要地域がアフリカである。
国際政治における多数の国々を抱えるアフリカの重要性はもとより言うまでもない。アフリカ大陸には54カ国、EU(27カ国)の2倍、EAS(18カ国)の3倍の国々があり、国連交渉における発言力は大きい。しかし、ここでは環境面に直結する点に焦点をあてたい。
まず、今後40年間で予想される世界の人口増約20億人の半分がアフリカで見込まれるということである。アフリカの人口は、現在の約10億人から約20億人に倍増すると見込まれている。現在の世界人口は約70億人から約90億人になる見通しであることから、「世界全体の7人に1人がアフリカ人」から「5人に1人強がアフリカ人」になるわけである。
次に、この地域の開発ニーズが極めて高いということである。アジアに比べても経済発展段階が低い国々が多いことから、「伸びしろ」がある。保健、水、防災、食料、インフラ整備などあらゆる分野での開発ニーズは高い。過去数十年にアジアで起きた奇跡が、これからの数十年にアフリカで起きる可能性がある。それは基本的には好ましい、後押しすべき流れであろう。
問題は、人口が倍増し、開発ニーズが満たされ発展するアフリカでは、エネルギー利用の増大とCO2の排出増も起きるということである。開発面で望ましい動きが、環境保全・気候変動対策上も望ましいとは限らない。また、経済規模、CO2排出規模におけるアフリカの比重が未だ小さいからといって将来もそうであるとは限らないのは、中国、インドを含むアジア各国の過去数十年の軌跡をみれば明らかであろう。経済発展と環境保全を如何に調和させるかは今は脆弱国が多数を占めるアフリカにとっても他人事ではないのである。
かかる問題意識から、日本はアフリカ開発会議(TICAD)プロセスにおいて、低炭素成長・気候変動に強靱な開発戦略を策定していこうという提案を2011年の第3回TICAD閣僚級会合で行った。人間の安全保障の理念に基づき、インフラ整備等による経済発展から、ミレニアム開発目標(MDG)達成など、幅広くアフリカ諸国への支援を行ってきた日本ならではの提案である。アフリカ諸国や世銀、国連開発計画(UNDP)などとの協議を重ね、COP17で戦略骨子を発表、本年5月の第4回TICAD閣僚級会合で中間報告を紹介した。その主なポイントは以下のとおりである。
○アフリカ諸国は,国際社会の支援を活用しつつ,「気候変動に強靱な(climate resilient)」経済成長を目指すとともに,再生可能エネルギー分野を含むグリーン成長により,成長を加速することが重要。
○アフリカでのグリーン成長推進においては、適応と緩和の統合、オーナーシップの強化、官民連携、開発パートナー間の調整の観点が重要。
○エネルギー、農業、森林、水、防災、運輸など個別セクターでの取り組み(グッドプラクティスの紹介など)
○分野横断的課題(キャパビル、資金調達、市場メカニズム活用、広報強化など)
本年10月の東京での世銀IMF年次総会や、COP18では、このグリーン成長戦略関連のサイドイベントが開催された。明年6月の第5回アフリカ開発会議(TICADV)に向けて、この戦略を完成させていくことになる。COP18でソウルに事務局を置くことが決まった緑の気候基金など、国際支援のリソースがアフリカに流れる際の重要な指針となることが期待される。この戦略づくりを主導する日本としても、環境と開発を両立させた形でのアフリカ支援策を打ち出していく必要がある。
(つづく)