電力供給を支える現場力② 

-冬に備える北海道電力苫東厚真発電所-


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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 10月12日に北海道電力が発表した今冬の需給見通しについての資料によれば、一昨年並みの厳しい気象条件(日平均気温-7.6度、降水量0.75mm/h)を前提に想定した場合、最大需要は563万kWとなるという(それも、節電定着分として19万kWを織り込み済みだ)。それに対して、2月に確保できると見込まれる供給力は596万kWとされるため、供給予備力は33万kW(供給予備率5.8%)だという。最低限必要とされる予備率は3%であるので、一見安心できるように思えるが、例えば、苫東厚真発電所は1号機35万kW,2号機60万kW,4号機70万kW(*3号機は平成17年10月廃止)である。苫東厚真のいずれか、あるいは、定期検査を相当延期している知内1号機が脱落すればたちまち供給力不足に陥る可能性があるのだ。さらに言えば、北海道は他からの融通を受けようにも本州との連系線(北本連系線)の容量に限りがあるし、本年1月25日に実際にあったように、船舶のイカリによるケーブル損傷で送電ができなくなる事態なども起こりうる。

 冬の北海道での停電は、地域および状況によっては命に関わる。灯油やガスの暖房も送風ファンや給油ポンプには電気が必要であるし、道路や鉄道の融雪・凍結防止にも電気は欠かすことができない。電力不足や電力料金の上昇が産業に与える影響は、商工会議所が会員企業対象に実施したアンケートを見ても明らかだが、冬の北海道における電力不足はダイレクトに生命の危機を意味する。この厳しい気象条件をみれば「たかが電気」と言える人はいないだろう。

出典 北海道電力(株)「今冬の電力需給見通しについて」2012年10月12日