第5回(後編)日本製紙連合会 技術環境部 専任調査役 池田直樹氏/株式会社日本製紙グループ本社 技術研究開発本部 エネルギー事業部長 野村治陽氏

製紙業界の循環型社会と創エネへの貢献。電力自由化に向けた動きも加速


国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授

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発送電分離ありきのスタンスではない

池田:電力の自由化について、電力システム改革専門委員会で林前エネルギー委員長(当時日本製紙副社長でもありました。)が言われましたが、カナダ・アルバータ州の大昭和丸紅インターナショナルという日本製紙グループの工場の例を挙げ、カナダの自由化は本当の意味での自由化で、需給のバランスによって電気の値段がまったく変わるそうです。余っている時は例えば5円・6円ですが、足りない時には50円になる。工場も自家発を持っていて、電気の単価が50円だったらパルプを作るのをやめて電気を出すというわけです(笑)。

――なるほど、その方が経済的にずっと得ですね。

池田:需給の調整は価格インセンティブを付けてもよいと思います。そういうものを含めて自由化を検討すべきでしょう。業界として、電力改革は進めるべきだと思います。ここしばらく電気が足りないという問題が続くのであれば、我々も自家発からの余剰電力を出すことになります。余剰電力を提供するためには、今の制度をもう少し我々の目線に立った制度に直していただきたいと思っています。

 我々が提示した点の見直しがされるのならば、発送電分離にはこだわりません。今の体制のままでもいい。電力会社がかなり努力してきて、安定供給体制を作ってきたわけですから、それを本当にバラバラにして、安定供給が可能なのかという懸念もあります。そこは慎重にやるべきでしょう。

――野村さんのお考えはいかがですか?

野村治陽氏(以下敬称略):30分同時同量・インバランス料金・託送料金・アンシラリー料金など、早く問題点の見直しをしてほしいと思っています。また、“電力会社の柔軟な切り替え”も必要です。部分供給といいますが、例えば昼間PPSの電力を買って、夜間は電力会社からの電力を買える体制を作ってほしい。我々も、どの時間帯でやりたいかについては心構えがあります。電力会社の柔軟な切り替えができると、PPS事業者が販売できるケースが増えますし、受電している工場は電気料金が高いときは安いところから購入するという切り替えが時間帯によってできるようになります。

――電力供給事業者は、フレキシブルな対応が必要になりますね。業界全体としても、会社ごとに対応が変わりそうですね。

池田:相当変わると思います。

――全体としては、プラスの面が大きいと思われますか?

池田:間違いなくプラスと言えるのは、使う方での自由度が増えることです。各社が自分たちの考えを取り入れた選択ができるようになります。今は、電力供給は地域独占ですから選択の自由がありません。

――ユーザーにとって選択の自由が広がるわけですね。

池田:当然使って買う方も勉強しなくてはいけません。損することもありますから。ただ何もせずに口を開けていて、いい物しか食べたくないと言っても無理なことです。いい物しか食べたくないのなら自分でちゃんといい物を探すといった努力も必要です。