核燃料サイクル対策へのアプローチ
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
総合的な検討と取り組みの必要性
こうしたアプローチはそれぞれお互いに排除するものではなく、同時並行的に検討することが可能である。ただし、その際には次の三つの原則を守らなければならない。
1) 整合性
政府の革新的エネルギー・環境戦略のように、論理的整合性が欠如したり、これまでの歴史的経緯や積み重ねを無視したりすると、現実的な解決策にならない。さまざまな論点でオプションはオープンに議論されるべきだが、その組み合わせは論理的・時間軸的に整合性をもったものでなければならない。
2) 柔軟性
例えば「もんじゅ」の開発に見られるように、核燃料サイクルにはそれぞれの工程において巨額の設備投資や研究開発費が必要になることから、いったん走り始めたら方向転換することが極めて難しくなる。その点を十分意識して、一定の方針を固めるまでには、さまざまなオプションを広く検討することと、組織や人材が一定のプロジェクトや制度に硬直的に貼り付かないような工夫を行う(例えば人事異動)ことが重要である。
3) 総合性
これまで、政府・民間とも、原子力を巡っての戦略や計画を策定する場が、様々存在していたため、自治体や諸外国には、場合によって国全体としての方向性が不明確に見えることがあったのでないか。特に2001年の省庁再編、民主党政権での意思決定システムの混乱など、原子力に限らず、国全体の意思決定システムが揺らいできた。
しかし、こと原子力については、国の安全保障、エネルギーインフラ、国民の生命・財産にかかわる安全性問題など、極めて重要な政策イシューである。今後、核燃料サイクルを検討する場をどこに設置し、どういったメンバーで議論していくのか、そして議論の結果をどう実施していくのか。総合的な視点での検討と取組みを実現できるよう配意すべきである。
※提携するGlobal Energy Policy Research(GEPR)のコラムより転載。(GEPR版)