隣の芝生は本当に青い?②

-意外に知られていない韓国の電力事情-


国際環境経済研究所理事・主席研究員

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エネルギー安全保障上の問題

 エネルギー問題を少しでもかじったことがある人間であれば、ウクライナとロシアが繰り広げた天然ガスの供給・料金設定をめぐる争いとそれが欧州各国に与えた混乱については見聞きしたことがあるはずだ。ロシアは、豊富に産出する天然ガスをパイプラインを通じて各国に輸出しているが、両国(正確には両国のガス供給事業者同士の争いであるが、双方国営企業)の間には価格設定や料金不払い、無断抜き取りなどを巡り様々な争いがあり、ロシアが供給遮断をするに至ったことが複数回あり、そのたびにパイプラインの末端に位置する欧州各国も甚大な影響を受けることとなった。欧州が再生可能エネルギーの普及を熱心に進める一つの契機となったとも言われており、燃種および調達先の多様性を確保することがいかに重要であるかを示す実例となっている。
 供給遮断の原因として考えられるのは、上述したような経済的理由にとどまらない。2005年から2006年にかけての紛争については、ウクライナの新政権が親欧米であったことから、ロシアが自国の政治的影響力の低下を懸念しての行動だったのではないかともささやかれた。

 以上、前回の韓国でなぜ電力料金が安いのかに続き、アジア全体での電力供給構想について検証した。
 エネルギーは国の「血液」であり、その供給途絶は死を意味すると言っても過言ではない。非常に複雑な歴史的背景、そして領土問題を抱える韓国と送電線を連携するというアイディアには、私はどうしても賛同できない。
 燃種及び調達先の多様性を確保しつつ、エネルギー自給率を高める方策を地道に進めることが、エネルギー問題を考えるうえで、あるいは一国の安全保障問題を考えるうえでは重要である。東アジア共同体の夢を見るのは良い。ただしエネルギーの供給を止められ寒さで夢から覚めるような事態になるのは絶対に避けるべきだ。エネルギー施設を含む基礎的インフラを日本ではライフラインと呼ぶ。ライフラインーまさに命綱であり生命線だ。自分の生命線を隣人に差し出すような真似は、私にはできない。

参考資料)
電気新聞2012年8月7日
日本経済新聞2012年9月3日
CIA The World Factbook

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