リオ+20参加報告 ③
企業・産業界にとっての今後の課題
立花 慶治
経団連自然保護協議会 顧問
(※これまでの解説は、「リオ+20① リオでの交渉プロセスをどう読み解くか?」、「リオ+20② 成果文書をどう読むべきか?」をご覧下さい)
貧困のただなかにある人達は世界の大企業をどうみるだろうか。あるいは、貧困撲滅が最大の政治課題である途上国政府は世界の大企業をどうみるだろうか。
筆者の泊まったホテルはファベーラにほど近く、隣のビルは廃墟、インターネットはつながらず、英語の新聞もなく、シャワーのお湯は鉄管のさびで真っ赤、というところだったのだが、それでも地元住民から見ればスーツ姿のエリートのみが出入りする別世界である。
ましてや、大企業のCEOの集まり「ビジネスデー」※1の会場地域となると、欧米の超一流ホテルが並ぶ町並みと全く同じ。そして、彼らCEOの経営する大企業がアマゾンの原住民を追い出し、熱帯雨林を切り倒し、地下資源を掘り出し、河川を汚染している、として抗議の対象となっている※2。
今回の合意文書では、このような世界の大企業の責任を問う条項(パラグラフ47)が入った。企業報告書(日本でいえば有価証券報告書)の中にサステナビリティに関する情報を含めるよう促す、というものだ。
ブラジルのルセフ大統領は、今回の合意文書のハイライトを紹介する演説の中で、この企業報告書の件もしっかりと言及。
ブラジル政府はまた、デンマーク・フランス・南アフリカと連帯し「パラグラフ47友の会」を結成※3、今後この課題にリーダーシップを発揮する意志を示した。
日本の多くの企業が「うちはサステナビリティレポートを出しているからOK」と思うかもしれないが、ここで言うサステナビリティのカバーする領域はもっと広く、合意文書の「持続的発展と貧困撲滅の文脈」全てが対象になると考えておいた方が良い。
さらに、合意はされなかったがリオで話題となった多くのこと、例えば 「自然資本宣言※4」なども、今後俎上に上ってくると覚悟した方が良い。
- 脚注)
- ※1
- http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/ymbvol202num1e.pdf 参照。
- ※2
- 例えば、
http://www.guardian.co.uk/environment/gallery/2012/jun/14/rio-20-amazon-deforestation-in-pictures#/ 参照。 - ※3
- http://www.unepfi.org/fileadmin/events/2012/Rio20/Press_release_Rio_outcome_document.pdf
- ※4
- http://www.naturalcapitaldeclaration.org/the-declaration/ 参照