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リオ+20参加報告 ③

企業・産業界にとっての今後の課題


経団連自然保護協議会 顧問


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注目すべき企業産業界の動向

 このような流れを大企業のCEOはリオでどのように受け止めたのか。

 代表例としてユニリーバのポール・ポルマンCEOが「自然資本宣言」公開の席上で行ったスピーチをガーディアン紙が報道※5しているので引用しよう。

「合意文書は底辺を目指す競争だった。…
「どの国の政府も地球問題を国内政策に落とし込めない。…
「批判ばかりしていても始まらない。…合意文書には良い要素がある。…
「海洋に関する宣言が入った。… 企業の役割も認知された。…
「合意文書は成程不十分だ。…
「合意文書の弱点こそ企業がダントツの貢献ができる場所だ。…
「企業が政府の先を行く、そういう面白い時代となった。…
「目に見える個別具体的プロジェクトから始めよう。仲間が増え、臨界点に達する。…
「消費者ともっと語ろう。…
「投資家にもっと上手く説明しよう。…」

 この最後の部分が、パラグラフ47に対応する。

 ポール・ポルマン氏は、現在WBCSD※6の副会長。論客であり、「我々こそ企業報告書問題に先見的に取り組まなくてはならない」と積極的に発言している。

 なぜユニリーバはそんなに持続的発展ならびに企業報告書に熱心なのか。

 答えはガーディアン紙に掲載されたポール・ポルマンCEOの別の発言にある。

「統計を見れば分かる。このままでは消費財セクターは2050年までに消滅してしまう。」

 ユニリーバは世界有数の冷凍魚輸入企業である。漁業資源の枯渇は直に同社ビジネスの根底を崩壊させる。だから海洋資源保護に関する宣言が合意文書に入ったことを歓迎しているのである。

 持続的発展を語る者の間では今や古典となったジャレド・ダイアモンド著・楡井浩一訳『文明崩壊』草思社(2005) p.300-305 を読むと、ユニリーバがWWFと組んでマリン・スチュワードシップ・カンシル(MSC:持続可能な漁業で捕獲した海産物であることを証明する機関)を立ち上げた経緯が紹介されている。

 この著名な先進的企業は、何も「地球愛」に溢れているから漁業資源保護活動に立ち上がったのではない。自らの存続のためである。

 更に、日本の大企業には余り見られないメンタリティだと思うが、規制を先取りすることで同業他社を出し抜こう、という強い意志が見られる。例えば、MSFマーク※7が貼ってある冷凍魚購買数の全体に占める割合を企業報告書に表記することを義務付ければ、資金調達の面で競合他社に対して優位に立つことができるのだ。

 これらの「自己愛」行動は、なんら非難すべきことではない。

 日本人の大好きなピーター・ドラッカーが次のように喝破※8しているではないか。

「社会へのインパクトの除去はコスト増を意味する。… したがって、同業他社が同じルールに従わなければ競争上不利になる。同じルールの受け入れは、規制つまり何らかの公的権力の行使によってのみ実現される。… 最小のコストと最大の利益をもたらす規制の方法を他に先んじて検討することが、マネジメント上の責任になる。その立法化をはかることが、マネジメント上の仕事になる。これまでは、企業に限らずあらゆる組織のマネジメントが、この責任をおろそかにしてきた。」

 企業報告書の検討は、このような「マネジメント上の責任と仕事」に目覚めた先進企業がリーダーシップをとり「パラグラフ47友の会」などと連携しつつ進められるのであろう。

「グリーン経済」とは弱肉強食の競争社会なのだ。WBCSDの初代事務総長ビョン・スティグソン氏が指摘したように、むしろ「グリーン競争」という表現の方がふさわしい。

 日本企業は、このような先進企業から学び、「自己愛」に目覚め、世界的視座をもって「グリーン競争」を勝ち抜いて欲しい。市民社会もそれを応援してほしい。

 日本は資源エネルギー小国である。日本人が後悔の念と共にモラレス大統領の警告を思い出す日。そんな日が来ないことを、祈る。

脚注)
 
※5
http://www.guardian.co.uk/sustainable-business/rio-20-unilever-battle-save-world 参照
※6
World Business Council for Sustainable Development:持続的発展を経営理念とするCEOの集まり。1992年のリオサミットを契機として生まれた。
※7
http://www.msc.org/
※8
P.F.ドラッカー著 ジョセフ・A・マチャレロ編 上田惇生訳『ドラッカー365の金言』ダイアモンド社(2005) p.188

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