広域系統運用者はアンバンドリングへの解となり得るか


Policy study group for electric power industry reform

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米国の地域送電機関(RTO)と比べてみると

 もともとISOという概念は、米国における電力分野の規制改革の中で提案され、いくつかの地域ですでに導入されてきたものだ。その歴史は連邦エネルギー規制委員会(FERC)がOrder 888と呼ばれる規則を出して、送電ネットワークへの非差別的なオープンアクセスを求めた時点に遡る。その後FERCはISOの概念をRTOに拡張し、各地域の電力会社に対してRTO設立を勧告した。すでに北米で10のRTOが形成されているが、RTOが存在していない地域も未だに多い(下図)。

FERCが定めたRTOの役割は以下の7つだ。

1. 送電ネットワーク利用料の管理や設定
2. 送電ネットワークの混雑管理
3. アンシラリーサービスの提供(短期での需要と供給のバランシング)
4. 系統情報開示システム(OASIS)の運用
5. 市場監視
6. 送電ネットワークの拡張計画
7. 地域を跨ぐコーディネーション

RTOが機能1,2,4,6を有するということは、送電ネットワーク利用者に対するサービスを、送電設備の所有者(地元の電力会社)に代わってワンストップで提供することを意味している。これらを市場関係者から独立した機関が一元的に果たすことで、送電NW利用の中立性・公平性・透明性が担保されると言えるだろう。
 さらにFERCはRTOの設立要件として①市場関係者からの独立性、②地域的な広がりを有すること、③短期的な電力供給の信頼性確保をあげている。要件①は当然だが、米国では電力会社の規模が小さいことが多いため要件②も課すことで、より広域的なネットワークの活用を期待しているものだが、「広域化」という視点は、今回の日本の広域系統運用者にも類似している。要件③は機能3に対応しており、自由化された電力市場で、市場参加者が自ら需要と供給の一致をはかってもなお残る需給の微少なずれを調整するのもRTOであることを示している。