スマートメーターに夢を託せるか


Policy study group for electric power industry reform

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 スマートメーターについては、以前も本欄でとりあげたが、再度、少し視点を変えて取り上げてみたい。

 まず、「モノのインターネット(IOT)サービス」について。

「モノのインターネット(IOT)」の夢が花開く?

 モノのインターネット(IOT:Internet of Things)とは、文字通り全てのモノがインターネットに繋がり、情報をやりとりする世界を指す。パソコンや携帯電話のような情報端末だけでなく、冷蔵庫や電子レンジやアイロンまでがインターネットに繋がり、情報を送受信することで、インターネットの世界が大きく広がり、新たな市場が生まれる・・こんな夢が語られている。そして、そのIOTサービスのハブとして、スマートメーターに期待する向きが多い。もっとも、こうした夢を語る識者の多くは、IOTが現状ではまだ「海のものとも山のものともつかない」ことは認識していて、その上で、「かつてインターネットが出現したときに、AmazonやGoogleやFacebookの出現を予想した人がいなかったように、誰も予想だにしないキラー・アプリが見つかるかもしれない」といったことを主張される。

 そのように夢を見ることは否定しない。ただ、思い出して欲しいのは、黎明期のインターネットは、まず新しいもの好きの人が使い始め、これは便利だ、ということで企業にも消費者にも使う人が増え、これらの企業や消費者向けにインターネットを活用したサービスを提供する企業も現れ、これがまた企業や消費者の支持を集め・・といった好循環の中で普及が進んできたということだ。初期段階で無理矢理全戸にインターネットを引き入れたわけではない。そんなことをする必要はなかったわけであるし、むしろ、そのようなことをすれば、インフラが硬直化して、かえってインターネットの発展を阻害しただろう。それをあえてしようとしたのが「光の道」構想であったわけだが、数年前、当時の原口総務大臣が盛り上げたこの構想の議論は、今では下火になっている。

スマートメーターはIOTのハブには不向きである

 そもそもスマートメーターが計測する情報は、モノのインターネットサービスにとって有益な情報となる可能性はあるが、あくまでサービスの中で活用される情報の一部を提供するセンサーの一つにすぎないから、モノのインターネットサービスのハブがスマートメーターでなくてはならない必然性はない。むしろ、向いていないと思われる。

 第一に、スマートメーターは全戸に設置が必要である。当然、モノのインターネットサービスに関心がない世帯にも設置され通信インフラも含めた追加コストが電気料金に上乗せされることになる。海のものとも山のものともつかないもの、つまり、予想だにしない画期的なアプリが出現するかもしれないが、結局鳴かず飛ばずかもしれないようなもののために、追加的コストをかけることは正当化されにくい。

 第二に、スマートメーターは計量法の縛りがあり、10年サイクルで定期的に交換していくことが求められる。技術開発に応じて柔軟に対応を求めることは困難だろう。