Diamond Jubilee、宴の後
菊川 人吾
国際環境経済研究所主席研究員
6月5日に英国エリザベス女王即位60周年記念行事がクライマックスを迎え、私も欧州に滞在している一人としてBBCやCNNにかじりつきユニオンジャック未だ健在という興奮と女王陛下の荘厳な存在感を味わった。
その興奮も覚めやらぬ6月7日、私は英国・スイス商工会議所が主催するビジネスワーキングランチに参加していた。その日のテーマは、“After Fukushima”。エリザベス女王と同じような気高い雰囲気を持つ女性が壇上にスピーカーとして紹介されていた。その女性は、Lady Barbara Judge女史、英国原子力公社の前理事長(the former head of the UK Atomic Energy Authority)である。Diamond Jubileeと呼ばれた即位記念行事の興奮を一気に打ち消すかのように彼女は“After Fukushima”について力強く話し始めた。(参考1)
要点はこうだったと思われる。
- (1)
- After Fukushimaであっても世界の原子力発電に関する動きに何ら変わりはない。原子力発電新設が62基から63基に増えており、むしろトレンドは逆とも言えるのではないか。
- (2)
- 英国はじめ、中国、インド、トルコやフィンランドもむしろ積極的に進めている。
- (3)
- After Fukushimaでpublic trustは失ってしまった面はあるが、原子力は、エネルギーセキュリティ・エネルギー独立性(基幹電力源として一定割合を天候等の制約要因に左右されず安定的に供給可能)・気候変動対策といった観点からその重要性は不変。
- (4)
- コスト低下、安定的価格にも寄与。 (5)
- 原子力に対する嫌悪はあくまでも政治的イシュー。
スイスの脱原発の動きを意識しているのか、女史のユーモアに時折笑いは起こるものの、力強いスピーチに一種の緊張感が会場を覆っていた。翌週月曜の朝一のラジオ番組で女史のインタビューが紹介されており、“Nuclear is a safe technology”とややセンセーショナルな頭出しで報道されていた。4月9日付でオピニオン欄に投稿させていただいたとおり、スイスでは脱原発に向けた議論が活発化しているからでもあろう。
(参考)
1.ビジネスワーキングの様子は以下のウェブアドレスから。
http://www.bscc.co.uk/index.php?option=com_phocagallery&view=category&id=267:lady-barbara-judge-geneva-07-06-2012&Itemid=204