日本における発送電分離は機能しているか
電力改革研究会
Policy study group for electric power industry reform
ESCJは機能していないと言われるが
4月25日の第4回電力システム改革専門委員会では、ESCJが機能していない、その原因は、事務局が電力会社の出向者で占められているからだ、権限がないからだ、との意見があった。しかし、前述の通り、中立性・公平性・透明性を配慮した運営ルールがあり、国の事後措置が可能であることを踏まえると、むしろ、各関係者にESCJを使う、あるいは機能させる努力が不足していたように思える。
当日の事務局資料には「送配電部門の中立性に疑義があるとの指摘(事業者の声)」と題して、新規参入者(新電力)から寄せられた事例が8つ記載されている。詳細は経産省HPに掲載された資料をご確認いただきたいが(リンク先は文末に紹介)、記載されているのは疑義だけではなく、既定のルールに対する不満も混在している。こうした声は、言いっぱなしにするのではなく、中立性に照らして本当に問題があるのかどうか、関係者の間でしっかり深掘りするべきものだ。新電力もESCJの理事会に名前を連ねており、事務局に人も派遣しているのだから、不満・疑問があるのならESCJに相談するなり、ルールの改正を提案すればよい。電力会社も、自らの行為に問題がないと思うならば、今からでもこれらの事例を自らESCJに持ち込み、調査・解明を依頼するべきだ。
加えてエネ庁も、これらの声が寄せられたのであれば、まず必要なのは、ESCJに調査を依頼するなり、自ら調査をして状況を解明することだ。それをすることなく、寄せられた声をそのまま右から左で資料に記載するだけでは、自ら制定したESCJ等の制度を、エネ庁自らスポイルしていると言えないか。上述のとおり、より強力な発送電分離に踏み切るなら、財産権を制限することでしか解決できない問題の所在を行政が証明して、憲法問題をクリアすることが必要だ。今の行政の対応状況が、その証明に耐えるとは考えにくい。
(参考文献)
第4回電力システム改革専門委員会(2012年4月25日)参考資料1-2 事務局提出資料
(本文で言及している部分は、以下のリンクのP18-20)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/004_s01_02e.pdf