米国の温室効果ガス削減の中期目標達成は困難

米エネルギー情報局の2012年予測で明らかに

印刷用ページ

「2005年比で7.5%削減」と、中期目標とは大きく乖離

 ただし、温室効果ガスの中期目標と比較すると、低炭素化が十分に進んでいるとは言えない。ターゲット年である2020年でも、エネルギー起源のCO2排出量は55億5000万tに達しており、2005年比で7.5%しか減少していない。温室効果ガス全体で17%削減するという目標水準には遠く及ばないのだ。

 もちろん、今後、新たに実施される施策によって排出量が減る可能性はある。しかし、AEO2012概要版のリファレンス・ケースには、電気機器や建物における効率指標等の電力需要面での規制や高効率化、発電効率指標やRPS(再生可能エネルギー利用割合基準)制度等の施策の効果など電力供給面での低炭素化、そして、輸送部門での燃料価格高騰や燃料効率指標制度(CAFE)の影響・効果はすでに織り込んでいる。さらに、最近のシェールガス採掘技術の向上も加味されており、天然ガスの発電割合の増加(2010年の24%から2035年には27%に増加、石炭は45%から39%に減少と予測)というAEO2011にはなかった要素も反映されている。

 2012年2月13日に発表された米国の2013会計年度(2012年10月~2013年9月)予算教書では、再生可能エネルギーの活用やエネルギー効率向上のための予算配分が増やされている。しかし、中期目標とAEO2012概要版における排出量見通しとの乖離は、再生可能エネルギーを多少増加させるくらいで穴埋めできるようなレベルではない。また、財政赤字削減や雇用問題など、より優先度の高い問題を抱える米国の事情を考慮すれば、2020年の温室効果ガス削減目標が今後、実質的に緩和される可能性も否定できない。

 温暖化対策の今後の国際枠組みに関して、日本は米国と同じ枠組みに入るべきである。ただし、枠組みが同じでも目標水準に明らかな差があっては公平性を欠き、意味がない。今後、日本の25%削減目標の見直しについて議論する際は、世界の温室効果ガス排出量の2割近くを占める米国の目標水準にも十分な注意を向ける必要がある。

出典:AEO2012概要版

記事全文(PDF)