電力供給・温暖化のトンデモ本に要注意!
データや理論をきちんと判断する姿勢が必要に
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
温暖化問題を全否定する態度は科学的ではない
2000年代中ごろには、欧米で原発の再評価が進み、「原子力ルネサンス」と呼ばれた。この最大の理由は温暖化問題だった。石油、天然ガス、石炭の化石燃料を使用すれば、温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)が発生し、温暖化が進むことが懸念される。このためCO2を排出しない原発に対する見直しが進んだ。広瀬氏は、原発が見直されるきっかけになった温暖化問題が気に入らないとみえ、CO2は温暖化の原因ではないと主張している。温暖化懐疑論と言われる主張と同じだ。
温暖化の原因についてはさまざまな説があるが、大多数の科学者はCO2などの温室効果ガスが温暖化を引き起こしているとの立場を取っている。共和党の大統領候補選に立候補していたハンツマン前ユタ州知事は「90%の医者が、これがガンの原因と言えば、皆信じるのではないか。温暖化も同じことだ。90%の科学者が『温室効果ガスが温暖化の原因』と言っている以上、信じるほかない」と発言し、共和党に多い温暖化懐疑論信奉者からブーイングを浴びたが、この発言が温暖化問題に関する常識的な見方だろう。地球規模の話でもあり、まだ科学的に100%確実ではないが、温暖化の主因はCO2というのが大多数の意見だ。米国では、以前は多くの企業人が温暖化懐疑論を支持していたが、最近では滅法少なくなった。
広瀬氏は「懐疑論を頭から否定するのは科学的な態度ではない」と主張するが、温暖化の原因はCO2ではないと断定するほうが、もっと科学的な態度ではない。広瀬氏は、米国のテレビやラジオの気象予報士の63%が異常気象は自然現象によると主張していることを温暖化を否定する根拠としている。確かに、米国の気象予報士の多くは、理由は不明だが異常気象は温暖化によるものではないとの立場のようで、そのことが米国でも“不思議な話”として話題になっている。だからと言って、温暖化を否定する根拠になる話ではない。