塩崎保美・日本化学工業協会技術委員会委員長に聞く[後編]
社会のサステナビリティを支える化学産業
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
政府にしかできないことはどんどん議論して、大胆な発想で行動を
――環境と経済の融合をどのようにお考えでしょうか。また、国に対しての期待は?
塩崎:化学産業の特徴は、“レスポンシブル・ケア”という考え方を大事にしていることです。その実現のために、自ら目標を立て、実行し、チェックして、さらに新しくアクションを起こす「PDCAサイクル」と呼ばれる手法を取り入れています。これにより、環境と経済のバランスをキープし、バランスよい取り組みで成果を上げていくことが大事です。環境負荷が少ない技術を開発し続け、環境にやさしく、従来の製品に比べて環境負荷の少ない製品を開発しています。2次電池材料など、使用時のCO2発生を削減する製品の開発などもその一つです。今は温暖化問題が焦点になっていますが、地球環境問題は温暖化だけではありません。大気汚染、水質の問題などいろいろな問題があるわけですから、全般的にやっていくことが大切です。
国には、もっと大胆な発想を持ってもらいたいと思っています。たとえば電力の問題に関しても、今は日本の東西で、周波数が50Hzと60Hzに分かれているという問題があります。周波数の統一は民間にはできない、国や政府にしかできない役割だと思います。そういうことをどんどん議論して、実行してほしいと思います。とにかく大胆な発想で行動していくことが大事です。
――今後の日本経済については、どのようにお考えですか。
塩崎:私はエンジニアですので、経済学者のような分析はできませんが、日本の経済はこのままでは縮小均衡の悪循環に陥るのではないかと危惧しています。これを打ち破るためには官民あげて新たな付加価値を持った産業分野の創出に邁進する必要があります。エネルギー・環境分野、IT分野、ライフサイエンス分野など日本が得意とする分野は沢山あります。国は法人税を下げ、各種規制緩和で企業の活力を高めるように後押しし、企業も高齢者や女性などの雇用を促進して、内需拡大を図ると共に、海外へのインフラ輸出などで一層発展を目指すべきでしょう。