COP17を巡る諸外国の動向等について
手塚 宏之
国際環境経済研究所主席研究員、JFEスチール 専門主監(地球環境)
京都議定書の単純延長には一貫して反対の日本
こうした各国の動きに対し、日本やカナダ、ロシアは世界排出量の26%しかカバーしない京都議定書の単純延長には一貫して反対している。すでに日本はCOPの事前協議の場で「包括的枠組みができるまで、各国がコペンハーゲン合意に基づく(自主的な)目標を掲げて削減努力をするべき」と提案した。
日本は昨年のCOP16冒頭で「いかなる状況、条件下でも京都議定書の第2約束期間にはコミットしない」ことを宣言し、その後一貫して、その方針を貫いている。一方、コペンハーゲン合意で日本が提出した「条件付25%削減」目標については、「主要排出国が入った公平かつ実効性のある法的拘束力のある枠組みができれば」という前提条件がついている。
国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、日本のエネルギー起源CO2の総排出量は約10.9億t。25%削減とすると約2.7億t削減になるが、これは中国が2008年から1年間で増やしたCO2排出量約3.2億tでほぼ相殺されてしまう。つまり、日本が仮に莫大な国民負担をかけて10年間かけて年間排出量を25%削減したとしても、地球規模で見れば、その削減分は中国の1年間の排出増で帳消しとなってしまう。この事実は、日本国民も理解すべきである。
表.COP17に対する各国のポジションの違い
京都議定書の第2約束期間への対応 | |
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中国を含む途上国 (新興国、島嶼国、最貧国) |
必要。“空白期間”の発生を回避すべき。先進国のみが法的削減義務を負うべきで、途上国と先進国が同質な義務を負うことは不可 |
日本、カナダ、ロシア | 世界排出量の26%しかカバーしておらず拒否 |
EU(欧州連合) | すべての主要国が参加する法的枠組みに向けた交渉マンデートに合意することを前提に“オープン” |
米国 | 先進国と途上国で約束の厳密な同質性が担保されない限り、(次期枠組みの)交渉マンデートに合意できない(特に、中国と米国の負う義務や責任はまったく同等でなければならないと主張) |
オーストラリア ニュージーランド |
新たな法的枠組みができることを条件に参加を容認 |