震災を機に評価高まる都市ガスの可能性[後編]
安定的な供給体制構築へ求められる国の役割
松本 真由美
国際環境経済研究所理事、東京大学客員准教授
ガス利用の拡大が中長期的な発展のためには不可欠に
――2030年、2050年を見据えて、どのような未来図を描いていますか。
池島:現在の都市ガスの販売量は、産業用が約半分を占めています。30年前になりますが、私が会社に入ったころは、家庭用が半分以上を占めていました。市場構造は変わってきています。
地球温暖化問題では、産業分野でのCO2排出削減が厳しく問われていますが、CO2を削減するためには天然ガスを普及させなくてはならない。現在、産業用の熱需要では、天然ガスの占有率が約10%と言われていますが、我々は、2030年までに25%に引き上げたいと計画しています。単に燃料を入れ替えるだけでなく、より効率的なエネルギーの使い方が求められます。排熱を有効利用して電気が余れば、その電気を別の場所で使い、一方、熱が余るのなら、それを別の場所に融通するという仕組みになるのではないかと思います。逆に、そのような仕組みを受け入れられる社会システムを作っていくようになるでしょう。
――排熱を上手に利用できれば、エネルギーが足りないと大騒ぎしていますが、少し明るい未来が描けそうです。
池島:そうですね。ただし、実現するのは大変なことです。そこを乗り越えていけるかどうか、私どもも努力しなければならないですし、国家として、その方向性を政策にしていくことが必要だと思います。いつまでも、エネルギーの無駄遣いをしているようではダメです。我々もその使命を強く感じています。
■インタビュー後記
震災以降、災害に強い町づくり、エネルギーセキュリティの強化などが求められるなか、ガス利用に対する評価が高まっています。コジェネレーションを含む発電事業への展開、社会インフラとしてのパイプライン整備についての要望など、率直にお話しいただきました。今後のエネルギーの多様化に、ガスが果たすポテンシャルは大きいと期待しています。