再生可能エネルギー促進法は理解されたか?
堀越 秀彦
国際環境経済研究所主席研究員
コンセンサス不足の再生可能エネルギー促進法案
今国会では、「再生可能エネルギー促進法案」こと「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」が菅首相の進退とともに話題になった。同法は再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度を導入するものであり、国民生活や国家の将来に影響する重要な法案だ。また、コストの負担のあり方など難しい側面を持った法案でもある。ところが、法案に対する十分な理解がないまま、国会での審議が進められてきた。
震災前の2010年秋、ノルド社会環境研究所では、地球温暖化対策に関する意識調査を実施した。この調査は我が国が進めようとしている地球温暖化対策がどの程度まで国民に認知され、浸透しているのか等を把握することを目的としたものだ。具体的には、鳩山前首相の表明した中期目標(2020年までに25%削減)や地球温暖化対策基本法、国内排出量取引制度、地球温暖化対策税、全量固定価格買取制度等の施策などについて、全国の20歳以上の男女1000人を対象に認知状況や評価の分析を行った。
この調査の段階では、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度については、施策内容についての認知率は1割にとどまり、半数が「知らない」と回答したにもかかわらず、同制度に4割が賛成し、反対は1割という結果だった。
また同じ調査で、我が国のエネルギー使用が効率的であることを認識していた人の割合は2割、日本の場合に二酸化炭素の排出削減費用が他国よりも多くかかる(削減余地が他国に比べて小さい)ことを知っていた割合も2割にとどまるなど、エネルギーにかかわる内外の情勢が十分知られていないことも明らかになった。
調査全体を通じて、地球温暖化対策について国民の理解やコンセンサスが形成されておらず、時間をかけた議論が必要だということを示唆する結果だったと言える。
図1 国民が理解していない制度の導入に問題はないか?
ノルド社会環境研究所が昨秋実施した調査では、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度に関する国民コンセンサスは得られていなかった(http://www.nord-ise.com/press101130/ReleaseGHG20101130.pdf)