二項対立の構図がエネルギー政策を停滞させる


ソフィアバンク副代表

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 エネルギー政策に関して、私のfacebookで、2回のアンケートを行った。1回目は、2011年6月23日から7月6日まで、「政府の提唱するエネルギー政策(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思うか?」という問いを投げかけ、2回目は、7月14日から7月20日まで、「総理の脱・原発依存宣言をどう思うか?」という問いを投げかけた。

 結論は、図1、図2の通りであり、どちらの結果を見ても、過半数の回答者が「原発依存からの脱却」を望んでいることがわかる。新聞等での調査結果より、その割合が多いのは、ネットユーザーによる特徴があるのかもしれない。しかし、原発依存からの脱却を望む回答者たちも、「即座に原発を止めるべき」という人は多くない。図1の「三本柱で進める」に投票した人の75%は、段階的に原子力発電の割合を減らしていくことを求めている。マスメディアでありがちな、「脱原発=即原発全停止」のようなヒステリックな意見ではないのである。このアンケートに答えてくれた人々をベースに見れば、マスメディア的な二項対立に陥り、思考停止している人ばかりではないことがわかる。メディアが政局と絡めてエネルギー問題を報道するために、国民の意思を見えなくしてしまっているのではないかとも思えてならない。

図1
政府が提唱するエネルギー政策の4本柱(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思いますか?

図1 政府が提唱するエネルギー政策の4本柱(原子力・火力・省エネ・自然エネ)についてどう思いますか?
2011年6月23日~7月6日に、http://www.facebook.com/kumi.fujisawaでアンケートを実施。
351件の回答を得た

図2
7月13日の菅総理の「原発に依存しない社会を目指す」という宣言、評価しますか?

図2 7月13日の菅総理の「原発に依存しない社会を目指す」という宣言、評価しますか?
2011年7月14日~7月20日に、http://www.facebook.com/kumi.fujisawaでアンケートを実施。
294件の回答を得た

子孫の選択肢を狭めない冷静な議論を

 福島第一原発の事故を体験し、現代の人間の手に追いきれない放射能の影響を目の前にして、多くの人が、原発依存から脱却を求めるのは当たり前であろう。

 今や、国内のほとんどの政党が、原発依存からの脱却を宣言し始めている。本来ならば、総理による原発依存からの脱却宣言を受け、間髪置かずに原発依存からの道筋を具体的に論じて然るべきだろう。

 しかし、どう考えても、自然エネルギーが原子力発電を代替できるほど成熟するには数十年かかるだろうし、化石燃料の使用増は温暖化問題にマイナスであるのだから、原子力発電をゼロにすると目標設定しても、数十年先のこととなる可能性は高い。そのことを早く明示することが、原発依存の見直しを含めた現実的なエネルギー政策の検討を早め、結果として、国民の安心につながる。

 もちろん、これまでの基準で原発の再開を認めるべきではなく、厳しいストレステストは必須であり、かつ原子力行政全般を見直すことも必須である。

 こうした明確な方針を打ち出したうえで、原発の研究は続けていけばよい。その結果、今は不可能と思われる安全確保のための技術も確立されるかもしれない。あるいは、原発よりも早く、自然エネルギー技術が十分な実用性を確立できるかもしれない。

 二項対立の構図を作り十分な検討もないまま早々にどちらかに決めることは、現代を生きる我々にとってだけでなく、将来を生きる人々にとっても、選択肢を狭められた不利な状況に追い込むことになりかねない。

 不毛な二項対立の議論に踊らされることなく、現代を生きる我々と未来を生きる子どもたちのために、どのような準備を始めるかが問われているのではないだろうか。

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