日本の総力をあげ総合的な水管理システムを


富士常葉大学社会環境学部教授

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省エネだけでは世界市場で生き残れない

 著者は30年前に、嫌気性処理を導入した無動力小規模排水処理装置の開発に一部関与したことがある。当時、一定の処理性能を保持するためには有効容量が過大になることから実用化を断念したが、現在、再考の余地があるのではないかと思案している。

 今後の生活排水対策は、都市部よりも人口5万人以下の自治体が主な対象地域となる。一方で、地方財政は逼迫しているため、低炭素化と併せて低コストで、かつ高度な処理能力を有する汚水処理技術の導入が求められている。

 現在、排水処理分野では、今後の生活排水対策として集中型の下水道あるいは分散型の浄化槽のどちらを適用すべきか議論されている。もちろん、地域の特性に見合ったシステムの採用が最適であるが、いずれにおいても省エネの達成は必須の課題であり、自然エネルギーの活用が検討されている。また、処理水や発生汚泥のリサイクルと資源化、総窒素および総リンの効率的除去、処理施設と下水道管路の補修や耐用年数の拡大、管理運営を円滑にするための事業実施地域と使用料の見直しなどが検討されている。

 低炭素社会構築のための技術開発は、わが国のみならず、排水処理の導入を必要とする途上国においても求められている課題である。研究者、技術者だけが取り組むのではなく、日本の総力をあげて総合的水管理システムを確立していくことが期待される。

参考文献

  1. 森田弘昭:下水道における低炭素社会づくりへの取組み、用水と廃水、52(10)、798-806(2010)
  2. 西村修、濱中俊輔:低炭素社会を目途とした生態工学の活用技法、用水と廃水、52(10)、827-834(2010)

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