セキュリティに重点を置いたエネルギー政策への転換を
澤 昭裕
国際環境経済研究所前所長
温暖化政策に影響され始めたネルギーセキュリティ
政府とその審議会(総合エネルギー調査会、省庁再編以降総合資源エネルギー調査会)は、67年に1回目の長期エネルギー需給見通しを含む第一次答申を提出。低廉な石油輸入によるエネルギー供給体制を基本とし、石油供給の安定等が重要な課題だと指摘した。二度の石油危機を経て、75年の第三回見通し以降は、政策的には原子力発電や石油代替エネルギーの導入促進、省エネルギーの必要性が強調された。しかし、数量目標としての「見通し」(エネルギー需給の想定)は、実勢を踏まえた自然体の見通しに近いものであった。
90年の見通し以降は、気候変動枠組み条約の署名を背景に、地球環境問題への対応の必要性という考え方が導入され、わが国の長期的なエネルギー政策の努力目標としての性格を併せ持つようになる。このようなエネルギー政策が対象とする政策目標のカバレッジの広がりを踏まえて、2002年にエネルギー政策基本法が制定・施行された。同法は、エネルギー政策を国家の基本政策の一つと位置づけ、政府に対して状況の変化に即応して需給両面でのエネルギー関連施策を講ずるように求めたものである。
その後は、同法に明示された「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」というエネルギー政策の3つの基本方針に則り、エネルギー基本計画が策定されるようになった。2010年6月18日に閣議決定されたエネルギー基本計画 を見ると、ここ最近のエネルギー政策論議の焦点が理解できる。それらの焦点は次の3点に要約できる。