運輸部門のエネルギー消費量抑制のカギを探る
小林 茂樹
中部交通研究所 主席研究員
途上国のモータリゼーションの急進が脅威に
運輸部門は2007年に、世界のエネルギー関連CO2排出量の23%(66億t)を排出。年間排出量は、1990年比で40%増加した。90年比の増加率は、下図に示すように最終消費部門のなかで最高である(ここでの比較では、電気使用による間接的な排出は含んでいない)。ただ、エネルギー消費の動向同様、先進国では、産業部門からの排出はほぼ横這いであり、また交通部門からの排出も日本やドイツ、フランスなどでは、ここ数年減少傾向にある。運輸のなかのサブセクターごとに見ると、道路交通は90年比で47%増、そしてバンカー油を利用する国際航空、船舶の伸びは、各々71%、62%と大きな増加となっている。
運輸のなかで、道路交通からのCO2排出量は現在73%を占めている。そのなかで途上国の割合は2007年時点で36%であるが、IEAの予測では今後急速に増加し、2030年には46%、2050年には55%に達する。一方、航空からの排出の割合は11%であるが、将来的には大きく増大し、2050年には20%を超え、その寄与率が増大すると予測されている。
以上のように、運輸部門からのCO2排出に関しては、現状では道路交通が最も排出割合が大きく、また、将来的にもその重要度は変わらない。特に、途上国でのモータリゼーションの急進による保有台数の増加が、エネルギー消費、CO2排出ともに、大きな脅威となる。道路交通のほかには、特に伸びの大きい航空部門が次第に無視できないサブセクターになってくる。
国内の状況を見ると、運輸全体では、エネルギー消費、CO2排出量ともに90年比10%程度の微増にとどまっている。伸びが大きいのは航空で、エネルギー消費が25%増えている。ただ、この伸びも90年代のものであり、2000年以降は横ばい状況にある。世界のエネルギー起因のCO2排出量に占める日本の総排出量および運輸全体の排出量は、各々4.3%、0.8%で、仮にこれをゼロにしても世界の温暖化対策としてはインパクトが小さい。やはり、将来的には伸びの大きい途上国での対策が最も効果があり、効率的である。