運輸部門のエネルギー消費量抑制のカギを探る


中部交通研究所 主席研究員

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運輸部門のエネルギー消費量抑制に成功しつつある日本

 2008年における世界の運輸部門のエネルギー使用量は、最終消費部門のなかで28%に達し(図1)、経済成長と共に、多くの地域で着実に増加している。例外的に、日本やドイツ、フランスなど先進国の一部では、ここ数年、減少傾向にある。これは、交通需要の低下と高効率化(=燃費向上)によるもので、米国における2008年以降の減少のように、景気後退の影響だけではない。

 運輸部門のエネルギー消費の大きな特徴は、その94%が石油系燃料に依存していることである。2008年のデータでは、運輸部門のサブセクターごとの割合をみると、道路交通が最も高く74%、ついで航空11%、船舶8%、鉄道2%である。1990年から2008年にかけて、先進国では、道路交通の消費エネルギーが、年平均1.6%増加した。途上国での伸びはさらに大きく3.9%に達しており、2030年までに、世界の道路交通エネルギー消費の47%を占めることになると予測されている(現在は36%)。

 量的な視点では、道路交通が最も重要なサブセクターだが、増加率は、国際的な航空および船舶の伸びは、同じ期間に、それぞれ年平均で2.5%、2.6%と道路交通(2.3%)を上回っている。さらに、国際航空は先進国で、国際船舶は途上国で増加率がより高くなっている。将来的にも高い伸びが予測されており、次第に、その重要性が増してくると思われる。

 以上は世界全体の概観だが日本はどうか。国内を見ると、最終消費部門のなかでの運輸の比率や、運輸内の各サブセクターの比率は世界全体とほぼ同じである。ただ、90年比でみた増加率では、特に船舶の伸びが低く、またバンカー油を使う国際航空、国際船舶の伸びも世界平均あるいはOECD平均よりも、かなり低い。国内だけを見ると、運輸部門は産業部門同様、優等生と言える。

運輸部門のエネルギー使用量のうち7割以上を道路交通が占める