3つの視点から気候変動問題を巡る国際交渉を考える


国際環境経済研究所主席研究員、(一財)日本原子力文化財団 理事長

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大欧州の連帯と味方を失った日本の孤独

【欧州の力】
 先進国首脳会議など国際的に重要な場面では、欧州各国に加えて、欧州連合(EU)が参加している。UNFCCCもまだ16年の歴史ではあるが同様である。欧州では、20世紀に2度の戦争を経験した。欧州大陸で二度と戦争を起こすまい、お互いの血を流すまいという強固な思いが、加盟27カ国の過去のしがらみや争いを超えて共有されている。そこには、石炭鉄鋼共同体をはじめとする3つの共同体に発するおよそ60年前からの“大ヨーロッパ合衆国”に向けた強力な胎動が見える。この動きは気候変動問題への取り組みにも見えるのだ。専門家は“EUバブル”と一言で片づけるが、この用語はあまりに薄っぺらで、本質を表していないように感ずる。もっと深く大きな流れなのだ。私見を言えば、この気候変動問題は、大欧州が内部を固め、世界の覇権を主導しようとする大きな軸の一つだと思う。

 こうした点から米国を評すれば、米国は、建国以来、いまだ230余年の歴史しかない若い国であって、まだ、欧州には敵わないのではないか。思想や主義で世界に影響を与え、“統治”するという凄みのある力は、いまだ、欧州が一枚も二枚も上だということだろう。

 それにつけても、わが日本は、何と世界のなかで孤立し、一国だけの主張をしているのだろうか。近年の大きな裏切りによって米国という強力な味方をなくし、一国の仲間もいない状況を作り出してしまった。これからは、何とかアジア太平洋地域で仲間を作り、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)ではないが、いくつかの国々と「地球温暖化対策連携協定(CPA:Climate Partnership Agreement)」を結んで、気候変動問題に取り組みたいものだ。これこそが先進国日本の貢献の道だし、この問題に付けられた“地球”と言う冠の意味を活かし、国境を取り外してみる試みではなかろうか。

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