エネルギー危機に備える“貿易力”
竹内 純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員/東北大学特任教授
(世界経済評論 2026年3・4月号 Vol.70 No.2 より転載:2026年3月15日発行)
昨年わが国は、憲政史上初の女性首相の誕生という転換点を迎えた。2026年の新年は株価も順調に上昇し、力強い日本の経済成長を期待する声も多い。しかし筆者は、そのためには「何はなくともエネルギー」だと考える。
石油も石炭も天然ガスもほとんど産出しないわが国のエネルギー自給率は先進国中最低レベルだ。資源外交を含め、海外から安定的にエネルギーを調達する“貿易力”はわが国の生命線であり、それが破綻したことが太平洋戦争の開戦につながった。
もちろん海外依存に甘んじるわけではない。原子力発電や再生可能エネルギーといった代替技術の開発にも他国に先駆けて取り組んできた。戦後80年であった昨年は、実は、原子力基本法制定から70年という年でもあった。原子爆弾を2度も投下され、核あるいは原子力といった言葉に対する忌避感や恐れが今以上に強かったと思われる当時、原子力の平和利用を国策として推進することを決めたのは、わが国が二度と化石燃料の供給途絶によって辛酸をなめることがないようにという悲願があったからだろう。
経済安全保障という言葉が一般的に使われるようになり、さまざまな重要物資の確保に向けて政府が戦略を策定するようになったことは、近年の政治的・経済的安全保障環境の変化を考えれば当然のことだ。しかし、すべての重要物資の製造・調達やサプライチェーンの維持の前提となるのが、食料とエネルギーであることが、十分認識されていないように筆者には思える。食料が無ければ国民がその生命を維持することはできないし、食料があってもエネルギーが無ければ運ぶことも調理することもできない。食料とエネルギーが確保された前提でなければ、他の重要物資の確保が覚束なくなることは明らかだ。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%、肥料や農薬、飼料の海外依存を考慮すれば、自給率はさらに低くなる。より深刻なのはエネルギー自給率だ。福島第一原発の事故以降、世界に類を見ないスピードで太陽光発電を導入したが、2023年度のエネルギー自給率はわずか15.3%にとどまる。
それぞれ自給率をあげる取り組みも進められているが、時間がかかるし限界がある。エネルギーは一瞬の途絶も許されないので、調達先の多様化や官民連携しての資源外交など、総合的な“貿易力”を高めていくことが、極めて重要な局面だ。国際秩序が不安定化する中で、どう生き残るのか。貿易の重みが増している。













