山火事と温暖化が加州の電気料金を上昇させる
山本 隆三
国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授
(「EPレポート3月11日号」より転載:3月15日)
米国は、2000年代後半のシェール革命以降全ての化石燃料を自給できる世界一のエネルギー大国になった。エネルギー・電力価格も日欧を下回り先進国の中では最も安い国だ。ただし、ガソリン価格と電気料金は地域の事情を反映するので、州により大きく異なる。
たとえば、家庭用電気料金が1kWh当たり40セント(¢)を超えるハワイ州を除けば、30¢を超えるのはカリフォルニア州とマサチューセッツ州のみだ。昨年12月の加州の料金30.55¢は全米平均の家庭用電気料金16.26¢のほぼ2倍。もっとも安いノースダコタ州10.21¢の約3倍になっている。月間使用量約900kWhの加州の標準家庭の電気料金の支払額は約4万円だ。
5年前の19年12月の加州の料金19.22¢に対し全米平均は13.04¢だった。5年間で加州の値上がり率は59%と、全米平均の25%を大きく上回る。上昇の理由の一つは州政府が温暖化対策として進めている再エネと蓄電池導入だ。18年に50万kWだった蓄電池は24年末には1600万kWを超えたようだ。目標は45年5200万kWだ。
もう一つ料金上昇の原因がある。今年1月の山火事により大規模な被害が報道された。火災の対策としてパシフィック・ガス・アンド・エレクトリックは送電線に隣接する森林の伐採を続けている。費用は年間18億ドルだ。今後、データーセンターの増設が送電関係費用と電気料金を上昇させる可能性も指摘されている。
電気料金上昇の実績と予測を受け、加州議会では料金抑制策の議論が始まった。議員からは、料金上昇の主な理由は温暖化対策なので、抑制は困難との発言も聞こえる。太陽光パネルを設置している家庭が送電の費用を十分に負担していないから、負担を求めるべきとの意見もあるが、再エネの導入を妨げる政策には反対も多い。
結局、温暖化対策のためとして電気料金の値上げは続くのだろうか。州政府と議会が脱炭素に突き進むのであれば、温暖化対策と再エネ・蓄電池導入の関係を断ち切らないと、料金上昇に歯止めを掛けることは困難なように見える。