廃プラスチックのリサイクルの現状と今後の展望(その2)


公益財団法人日本容器包装リサイクル協会 プラスチック容器事業部

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前回:廃プラスチックのリサイクルの現状と今後の展望(その1)

4.今後のプラスチックリサイクルの展望

(1)容器包装の環境配慮設計
①容器製造・利用事業者とリサイクル側のマッチング

 プラ新法に定められた環境配慮設計については、各業界団体が経済産業省と連携して取り組みが進められていると思われますが、容器を設計・製造・利用する企業、業界の意見だけではなく、リサイクル事業者、リサイクル業界・団体の意見を踏まえた容器設計が望まれます。それによってより合理的、効率的な需給のマッチングや需要の創出が図られことが期待できます。
 いわゆる動静脈連携の促進は、こうした実務的、具体的な部分でも必要であり、その積み重ねが資源循環の加速にも資するものと考えます。

②ポストコンシューマーリサイクル材の利用

 業界ごとにつくられている環境配慮設計のガイドラインの中に、「リサイクル材の利用」というキーワードがありますが、リサイクル材とは何なのか特定がされていないケースが多いと思われます。
 リサイクル材といっても、プレコンシューマーリサイクル材(工場ロス品など。単一樹脂が多く、汚れ付着が少ないプラが多い)とポストコンシューマーリサイクル材(一般家庭から排出されたプラスチック。食べ残しが付着し、樹脂の種類も様々)があります。
 一般家庭から排出されたプラスチックごみは、食べ残しの付着や、様々な樹脂が混合されているため、PETボトルのように、材料リサイクルでもう一度食品容器に戻すことは難しいのが現状です。
 一般的には、プレコンシューマー材よりもポストコンシューマー材の方が、汚れや異物が多く、樹脂も単一でないため扱いにくいとされています。
 各業界で定める環境配慮設計のガイドラインには、プレコンシューマー材の利用率とポストコンシューマー材の利用率を分けて記載していただき、少しでも多くのポストコンシューマー材の利用を検討いただきたいと思います。

 廃プラスチックをもう一度食品容器に戻すことを検討するのであれば、初めから100%配合を目指すのではなく、0.1%でも配合するにはどうすれば良いかを考えて頂くことが望まれます。
 また、業界によっては、厳格な基準によりポストコンシューマー材を0.1%も使うことが出来ないケースもあると思います。そのような業界では、ポストコンシューマー材由来のパレットを物流倉庫等で使用していただくことで、持続可能なリサイクルにご協力いただければ幸いです。

 容器包装リサイクル法では、プラスチック製容器包装を製造・利用した事業者にそのリサイクル義務があります。リサイクル義務は、容器包装リサイクル協会に委託料金を支払えば果たしたことにはなりますが、持続可能なリサイクルには、排出者自らが少量ずつでもポストコンシューマー材を利用していただくことが着実かつ有効な方策と言えます。

③PS、PET製容器

 材料リサイクルにおいては、主にPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)を製品化し、PS(ポリスチレン)は一部製品化しています。PET製のトレーやシートは、製品化されず残渣となる事が多いです。
 PETトレーやPETシートが残渣となってしまう理由は、現時点では再生するためのラベル等を含む異物除去の費用が合わないことが主な要因です。
 今後、PETシート・PETトレーのリサイクル材の利用市場をつくっていくためには環境配慮設計の見直しが必要ですが、まずは、リサイクルしやすいPPやPEでの容器の設計・利用を拡充していくことが有効であると思います。

④PVC、PDVCが使用された容器

 ごみのダイオキシン問題が騒がれて以来、食品容器で使うプラスチックに、PVC(ポリ塩化ビニル)やPVDC(ポリ塩化ビニリデン)が使用されることはほとんど無くなりました。しかしながら、食品を包むラップ、ハム・ソーセージの袋、薬の包装材など、一部の容器包装には、いまだにPVC、PDVCが使われており、当協会が市町村から引き取るプラスチック製容器包装のベール(大きなサイコロ状に圧縮したもの)の中にも、数%のPVC、PDVCが含まれています(自治体ごとに樹脂の混入割合は異なります)。
 PVC、PDVCは、リサイクル工程で大きな支障をきたします。リサイクル工程の機械や、利用工程において、機械や金型の劣化等を招くことがあります。
 持続可能なリサイクルのために、PVC、PDVCは可能な限り食品容器に使用しないことや、PVC、PDVC製の容器を製造・利用した場合、再商品化コストに対応した通常よりも高い再商品化委託単価を支払っていただくことなども検討課題として考えられます。

(2)再商品化製品の利用用途
①容器包装プラスチック由来の再商品化製品の利用用途

 現在の材料リサイクルで製造された製品(ペレット等)は、再生樹脂を経由して、主に運送用のパレットや雨水貯留槽などの成型品に利用されています(図表3)。リサイクル製品を使うことで、バージンプラスチックの削減となり天然資源の削減効果があります。
 一方で、市民の一部からは、「自分たちが排出したプラスチックが何に生まれ変わっているのか分かりにくい」という声があります。
 今後は、ごみ袋や植木鉢など、身の回りにあるプラスチックにも代替され、市民がリサイクルを実感できるような再商品化製品の用途を拡大していく必要があります。

図表3 令和4年度 材料リサイクルの再商品化製品利用用途

②製品プラスチック由来の再商品化製品の利用用途

 プラ新法により、新たに一般家庭から集められる製品プラスチックは、PP製の硬質プラスチックが多いと言われており、しっかり選別ができれば、家電部品や自動車部品に一部配合出来る可能性があります。
 ただし、市町村から当協会に引き渡される際に、容器包装プラスチックと製品プラスチックを混載にベール化してしまうと、リサイクル工程で製品プラだけを選別することは難しくなります。
 「容器包装プラスチックと製品プラスチックは一括回収、一括でベール化するもの」と誤解している市町村が多いように感じます。以下の(図表4)の上のフローように、容器包装プラスチックと製品プラスチックは一括回収、一括でベール化して当協会に申し込んだ場合、市町村が製品プラの再商品化費用を支払うことになりますが、下のフロー図のように、市町村の中間処理施設で有価物として売却できる製品プラをピックアップできれば、市町村が負担する製品プラの再商品化コストも低減できますし、利用用途もパレット等ではなく、家電部品・自動車部品などに広がる可能性があります(認定ルートで製品プラの一部を有価売却する場合は、再商品化製品利用事業者や利用用途を確認し、適正な利用を担保する必要があります)。
 「容器包装プラスチックと製品プラスチックは一括回収、一括でベール化するもの」という固定概念を変えていく必要があると考えています。

 EUでは、「自動車設計・廃車(End-of-Life Vehicles:ELV)管理に関する規則案」が2023年欧州委員会で可決され、2024-2025年の欧州議会、欧州理事会で可決されれば、可決後72か月後(2031年頃)にEUに販売する自動車は、ポストコンシューマープラ(一般家庭から排出されたプラ)を25%以上含有しなければならなくなります。そしてそのうち1/4(=6.25%)は、自動車から出た廃プラスチック材料を使うことが求められます。残り3/4(18.75%)は、一般家庭から排出される製品プラスチック(硬質系PP等)を積極的に使用しようとする動きがあります。
 自動車の部品に用いるプラスチックの仕様(使用量、使用樹脂、配合等)は、販売開始(2031年)から4年前(2027年)には決定している事項であるため、2024~2026年にいかにポストコンシューマープラを集めることができるかが重要となります。
 今回のELV規制は厳しい案となっており、自動車業界からはもっと緩やかな規制を求める声がある一方、リサイクル業者は案を歓迎しつつも政府によるサポートが要請されているようです。
 当協会としても、製品プラスチックを自動車用途に展開するため、自動車業界との情報交換を積極的に行っていきたいと考えています。

図表4 容器包装プラスチックと製品プラスチックの区分け

(3)材料リサイクルから生じる残さの有効利用

 材料リサイクルの工程では、家庭から排出されたプラスチックのうち約半分は製品化できますが、残りの約半分は、製品化されずに残さとなってしまいます。残さの中身については、PP、PE以外の樹脂製の容器、複合素材の容器、PVC容器などです。
 残さの主な利用先は、RPF原料、工業用燃料化(セメント利用)、焼却エネルギー回収です(図表5)
 材料リサイクルから発生する残さは、ほかの廃プラスチックに比べて塩素濃度が高く、残さ利用であっても焼却炉やボイラーを傷めるなど利用しにくくなっています。

図表5 令和4年度 材料リサイクルで生じた残さの利用用途

 材料リサイクル事業者で生じた残さを成型品加工やケミカルリサイクルで活用した場合、総合的評価制度(材料リサイクル事業者を評価して落札可能量を決定するしくみ)で評価する仕組みの検討が必要であると考えます。このことは、以下の平成28年度容リ法審議会の報告書※3にも掲載されていますが、政策として未だ実現されていません。

※3 平成28年度 容器包装リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y034-18/900419414.pdf

<考えられる施策の例> ※記載抜粋
材料リサイクル全体の環境負荷低減に向けて、再商品化の過程で発生する残渣は、再生利用をできる限り推奨すべきであり、例えば、単一素材化の取組とともに再生利用率を向上させる取組については、総合的評価制度において評価すべきである。

(4)新たな再商品化手法

 現在、容リ法・プラ新法でリサイクルとして認められている再商品化手法は、材料リサイクル、油化、ガス化、コークス炉化学原料化、高炉還元剤化です。
 今後は、様々なリサイクルの方法が出てくることが予想されますが、しっかり検証したうえで、最新技術を柔軟に認めていくことが必要であると思います。
 また、すでに記載した平成29年度に実施した環境省の審議会で、燃料ガス化や燃料油化については、緊急避難的・補完的な再商品化手法となっており、入札には参加できないことを紹介しましたが、廃プラから水素を製造し水素燃料で自動車を走らせる等の水素社会に貢献する取り組みなど、社会の変化に応じた手法について、適時適切な判断を行っていくことも必要であると思います。

(5)地方のごみ・資源物の収集、リサイクル

 都市部では、ごみや資源物を効率良く回収しリサイクルすることが可能です。収集した後のリサイクル方法は、現在のシステムでもEUのソーティングセンター型でもどちらでも大差は無いと思います。
 一方、人口減少が続く地域では、少子高齢化が進み、市民に細かい分別排出を求めることも難しくなってきますし、1軒1軒が離れているのでパッカー車による収集効率も低下します。
 そこで、特にそうした地域では、以下の(図表6)のようなごみ・資源物の一括回収、一括処理を選択することが効果的であると考えます。

図表6 EUにおけるごみ処理先進事例(筆者作成)

<ごみ収集、資源物リサイクルに関する課題>

高齢化、外国人増加の状況のなか、市民の分別排出の徹底は難しくなっている。
特に地方では、過疎化や人口減少で各自治体による廃棄物の収集が非効率である。
ごみ収集車や中間処理施設等の3K職場では、人手不足が深刻化している。
一廃廃棄物と産業廃棄物の許可が異なり、閉鎖的な業界となっており新規参入も限定的である。

<ひとつの解決策>

「混ぜればごみ、分ければ資源」のほか、「混合収集して機械選別」という方法も考えられるのではないか。
市民の分別排出に頼らずに、プラスチックの回収量を大幅に増加させるためには、機械で選別可能なごみ・資源(可燃ごみ+プラスチック+PETボトル+アルミ缶+スチール缶等)を混合収集することで、コスト軽減とともに人手不足の解消が可能ではないか。
高効率ごみ発電焼却炉を核とした施設に多数の光学選別機や磁力選別機、うず電流設備等の機械選別を設置すれば、市民が分別排出しきれない可燃ごみに混入したプラスチック等を、ほぼ全量取り出すことが可能と思われる。

最後に

 サーキュラーエコノミー、資源循環というキーワードが出ていますが、そもそも廃プラスチックは適正な処理が求められる廃棄物であり、一般家庭から排出されたプラスチックは、60円/kgもの処理費用がかかる廃棄物なのです。大原則として、まずは廃棄物処理法を遵守したうえで、次のステップとして、リサイクル、資源循環を考えていくべきではないでしょうか。

 し尿処理の時代から、公衆衛生・廃棄物処理の業界では、全国の中小企業を中心とした収集運搬事業者、中間処理事業者、廃棄物処理事業者の皆様の努力が積み重ねられています。
 今後とも、廃棄物処理やリサイクルに関しては、現場の声を良く聞き、政策に反映することが大切です。当協会は、今後とも、現場と政策のギャップを少しでも埋めるべく、努力をしてまいりますので、引き続きご協力ご支援のほどよろしくお願い申しあげます。