廃プラスチックのリサイクルの現状と今後の展望(その1)


公益財団法人日本容器包装リサイクル協会 プラスチック容器事業部

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 プラスチックに係る資源循環等の促進に関する法律(以下、「プラ新法」という。)の施行に伴い、令和5年度より、35市町村・一部事務組合がプラスチック製容器包装に加え、製品プラスチックの分別収集・リサイクルが始まっています。また、プラ新法第33条による認定再商品化計画についても、仙台市(J&T環境)、横須賀市(TBM)、安城市(富山環境整備)をはじめ、多くの市町村で実施されています。
 日本国内のプラスチックリサイクルは転換期を迎えており、焼却されているプラスチックを少しでもリサイクルすべく、様々な取り組みが実施されています。
 世間では、サーキュラーエコノミーとか、資源循環というキーワードを頻繁に目にしますが、そもそも廃プラスチックは、廃棄物であることを忘れてはなりません。大原則として、まずは廃棄物処理法を遵守したうえで、リサイクルを考えていくことが重要と考えます。
 今回、私の原稿では、廃プラスチックのリサイクルについての展望と、まだまだ存在する課題について記載します。

1.プラ新法による収集量増加見通し

 環境省が取りまとめた「第四次循環基本計画の第2回点検及び循環経済工程表の策定について※1」によると、2030年までに、プラスチック製容器包装の収集量は現状の約70万トン/年から、さらに最大で50万トン/年増加する可能性があるとされ、プラスチック製品については約50万トン/年が収集される可能性があると記載されています。つまり、2030年までに、市町村から収集されるプラスチック製容器包装とプラスチック製品を合わせて最大で約170万トン/年となる可能性があるとされています。循環型社会形成推進交付金や特別交付税による効果もあり、プラスチック製容器包装とプラスチック製品の収集量は、2030年までに現在の2倍以上に急増するという試算となっています。

※1 「第四次循環基本計画の第2回点検及び循環経済工程表の策定について」72ページ目
出典:環境省 https://www.env.go.jp/content/000071599.pdf

2.令和5年度、プラ新法運用初年度を終えて

(1)容リルート、プラ新法32条ルート(容リプラ+製品プラ)
<令和5年度実績>
〔市町村からの引取量〕

容リプラのみ引取量:621,804トン/年(白色トレイ込み)
分別収集物(容リプラ+製品プラ)引取量:34,006トン/年(うち容リプラ29,287トン/年、うち製品プラ4,719トン/年)

〔再商品化製品販売量〕

容リプラ由来の再商品化製品販売量:410,552トン/年(白色トレイ込み)
分別収集物由来の再商品化製品販売量:21,244トン/年

 令和5年度の容リルート、プラ新法32条ルートの再商品化実績は上記のとおりでした。市町村ごとの詳細な実績は、当協会ホームページに掲載しています。エクセル形式で掲載していますので、ご参照ください。

容リ協会HPデータライブラリ https://www.jcpra.or.jp/tabid/1153/

(2)プラ新法32条認定ルート

 令和5年度に開始した国の認定ルートでの再商品化は、仙台市、安城市、横須賀市の3件のみで、合計約16,500トン/年(申請ベース)でのスタートとなりました。詳細の認定実績は、国から公表されると思います。
 令和6年度分については、上記3市のほか、高岡市、富山市、亀岡市、新宿区、岡崎市、堺市などの認定が認められています。再商品化計画認定自治体一覧については、以下の環境省プラスチック資源循環促進法専用サイトをご参照ください。

https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/bunbetsu

 認定ルートについては、一定程度のコスト抑制が期待出来ますが、再商品化工程が合理化される分、リサイクラーでの異物除去の負担が増加します。また、認定ごとに再商品化報告に基づく個別管理が必要になります。
 認定ルートの再商品化については、市町村が責任をもって管理することになりますので、国や都道府県のサポートが重要になると思います。

(3)製品プラスチックを分別収集・中間処理する市町村関係者へ伝えたいこと

 本記事の読者のなかには、市町村の関係者もいらっしゃると思いますので、市町村のご担当者様や中間処理施設の担当者様に向けて伝えたいことを記載します。市町村関係者以外の読者においても、製品プラスチックを分別収集、中間処理するうえで注意点があることをご理解いただきたいです。

①製品プラの収集品目の選定

市町村等が収集する製品プラの品目を選定するにあたり、環境省作成の「分別収集の手引き」を参考にすることになりますが、住民の排出状況や中間処理施設での選別状況を踏まえ、収集品目は慎重に決定する必要があります。
特に製品プラのうち、玩具や一部金属が付属しているプラスチック製品等「原材料の大部分がプラスチックであるもの」を収集対象としている市町村等は、リチウムイオン電池を含む電子機器等や、金属等の異物が増加する可能性があります。これらの異物の混入を防止するため、市民啓発や中間処理施設での確実な除去を徹底する必要があります。
混入防止が徹底できない場合は、別の対応策として「原材料の全部(100%)がプラスチック製のもの」だけを収集対象にすることや、「リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池内蔵製品のごみステーションでの分別収集」等を実施する必要があります。
参考:「プラスチックリサイクル施設におけるリチウムイオン電池発火問題」

②市民啓発の実施

ホームページや広報誌での周知や説明会の実施等、効果的な住民啓発を実施し、リチウムイオン電池を含む電子機器等に代表される禁忌品の混入防止に努めていただく必要があります。
住民が排出した禁忌品を、中間処理施設で全て除去することはできません。効果的な住民への啓発を実施し、禁忌品を排出しないような対策を実施する必要があります。

③市町村中間処理施設の管理

中間処理施設では、分別収集物の選別及び保管を適正に行い、適切に処理がされているか市町村自ら管理する必要があります。特に中間処理施設が、他の市町村と同じ施設で中間処理・保管を行う場合、他市町村の収集されたプラスチックや出来上がったベールが混入しないよう区分け処理・区分け保管を徹底し、引き渡すベールに間違いが発生しないよう対応する必要があります。
中間処理施設の能力(適切に選別をされたベールを作ることが可能な能力)を把握し、収集する分別収集物の量が中間処理施設の能力を上回る場合は、他の中間処理施設への変更や中間処理施設の追加を実施する必要があります(例えば、1,000tの処理能力を持つ中間処理施設が2,000tを処理することになった場合、適正な選別や管理がされていないベールを再生処理事業者に引き渡すことになり、異物の増加や、引き渡しベールの間違いが発生する可能性があります)。
特に中間処理施設が民間会社かつ複数の市町村の中間処理を実施している場合、年度ごとの契約によって中間処理を実施する市町村数が増減する可能性があります。必ず該当の中間処理施設の委託量を確認し、委託量が処理量を超える場合は、委託をした市町村間で委託量が処理量に収まるよう調整する必要があります。

④中間処理施設での禁忌品及び異物の除去

リチウムイオン電池を含む電子機器等に代表される禁忌品の除去を徹底する必要があります。
住民からのプラスチックの収集量と中間処理施設で出来上がった分別収集物の量から、残渣率の平均値を把握する等、中間処理施設で適正な異物除去が実施されるよう管理する必要があります。平均値を下回るようであれば、選別が行き届いていない場合があります。

⑤市町村等による品質調査の実施

分別収集物を申込む場合、容リプラと製品プラの比率を明確にするため、品質調査を実施のうえ、申込みを行います。品質調査の実施は、組成比率の把握だけでなく、異物や禁忌品の混入状況を把握し、今後の市民啓発や中間処理での対策を実施するうえでも、有効な方法となります。市町村による品質調査の実施予算が不足している場合は、環境省のモデル事業を活用し組成調査を実施することができます。

3.プラスチックリサイクル事業者の処理能力不足問題

 当協会に登録されているプラスチックのリサイクル事業者は、年々減少しており、平成25年度は76社でしたが、令和6年度では44社まで減少しています(図表1)
 ここまで事業者が減少した理由は、材料リサイクル事業者とガス化事業者の減少によるものです。入札等の競争や一般廃棄物処理施設設置許可等の新規参入条件等により、新規登録申請事業者もわずかな状況です。また、平成29年度に実施した環境省の審議会「プラスチック製容器包装に係る燃料ガス化等(生成されたガス等をそのまま燃焼させているもの)に関する検討会※2」の決定により、燃料ガス化として登録していた4社が入札に参加出来なくなり、平成31年度から未登録となってしまいました。
 なお、固形燃料化は、緊急避難的・補完的手法として認められているものの、国は現状において当該手法を認める状況ではないと判断しているため、事業者登録は可能ですが、入札には参加できない状況となっています。

図表1 プラスチック リサイクル事業者登録社数

※2 平成30年3月プラスチック製容器包装に係る燃料ガス化等(生成されたガス等をそのまま燃焼させているもの)に関する検討会資料
出典:環境HP https://www.env.go.jp/content/900538031.pdf

 リサイクル事業者の処理能力については、極めてひっ迫し深刻な状況であると考えています。
 リサイクル事業者における実際の処理可能能力は、機械の最大処理可能能力ではありません。リサイクル事業者では様々な課題に直面しており、市町村からのベール引取ドライバーの不足、リサイクル工場作業員の人員不足、残さ処分先の不足、再商品化製品の販売不振等の様々な要因で実際に可能な処理能力が決まります。当協会では、定期的に固形燃料化を除く全国の登録事業者を対象に処理能力調査を行っています。
 令和5年度、当協会が行った能力調査では、材料リサイクルで43万トン/年、ケミカルリサイクルで30万トン/年、合計約73万トン/年となり、令和5年度市町村申込量(認定ルート含む)約71万トン/年に対して、約2万トン/年の余力しか無い状況となっており、リサイクル事業者の処理能力は、極めて深刻な状況であると考えています(図表2)

図表2 令和5年度プラスチック落札量と再商品化能力(当協会調査)の比較

 プラ新法による市町村のプラスチック収集量の増加を見越して、数年以内に稼働を開始したいという材料リサイクル事業者が散見されますが、ケミカルリサイクルについては、テストプラントは稼働するものの、本格的なプラントの稼働はまだ様子を見るケースが多く、なお時間がかかるものと思われます。
 市町村の収集量が急増する可能性があるなか、更なるリサイクル事業者の処理能力増加が急務です。

新規事業者登録にご興味がある方はお問合せください。

 市町村が収集したプラスチックを確実に全量リサイクルするためには、既存事業者の能力増強だけではなく、新規事業者の参入が必要不可欠です。
 当協会では、市町村のプラスチック中間処理を実施している事業者の方や、産業廃棄物でプラスチックを扱う事業者の方等向けに、新規事業者登録のご説明・ご案内をしております。
 この記事を見ている方の中で、プラスチックのリサイクルに興味がある方は、お気軽に下記あてにご連絡をお願いいたします。

公益財団法人日本容器包装リサイクル協会
プラスチック容器事業部 清水、青柳
TEL:03-5532-8605 Email:shimizu@jcpra.or.jp
TEL:03-5532-8598 Email:aoyagi@jcpra.or.jp

次回:「廃プラスチックのリサイクルの現状と今後の展望(その2)」へ続く