20兆円の償還は負担増を招かないのか?


国際環境経済研究所所長、常葉大学名誉教授

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(「EPレポート」より転載:2023年12月21日号)

 エネルギー価格は、生活と産業に大きな影響を与える。このため政府は激変緩和措置として、ガソリン、電気料金などに補助金を支出している。日本のエネルギー価格の上昇は、欧州との比較では、緩やかだったが、補助金は減額されながら、ずるずると続いている。

 欧州発のエネルギー危機により、ドイツではエネルギーに支出の10%以上が当てられるエネルギー貧困と呼ばれる層が、4割を超えたと報じられた。今年10月の日本の消費者物価指数に占めるエネルギーのウエイトは7.12%だ。それでも補助金の継続が必要なのは、日本の生活は他の主要国より苦しいということだろうか。

 エネルギー価格は中期的には上昇する可能性が高い。一つは言うまでもなく今後増加する再エネ設備の発電量増によるものだ。固定価格買取制度に基づく12年7月以降の買取額は、今年6月時点で約26兆円。10kW以上の業務用太陽光だけで17兆円に上る。

 今後洋上風力設備を中心に導入量が増加すれば、電気料金に影響する。火力、原子力設備との比較では大量の資機材を利用する風力、太陽光の設備投資額はインフレの影響を受け上昇している。これから発電コストを押し上げ、料金の消費者負担も増えるだろう。

 もう一つは、脱炭素の先行投資を支える20兆円のGX移行債の償還財源だ。28年度導入予定の化石燃料賦課金と33年度からの発電事業者の負担金により賄われる予定だ。発電事業者の負担金には再エネ買取額の減額分が当てられるが、発電量が減少する中で電気料金が上昇する可能性もある。

 20兆円の投資により発電コストを下げるイノベーションが実現すれば別だが、その可能性は薄いだろう。補助金を必要とするほどエネルギー価格に対し脆弱な産業と家庭は負担できるのだろうか。

 移行債償還の前提は、GXにより日本経済が成長する儚い望みに立脚しているのではないか。政府の成長戦略は失われた30年の間に環境ビジネスを何度か取り上げたが、目標は実現しなかった。GXは成長につながるのだろうか。