The Global Warming Policy Foundation
温暖化に適応するサンゴ礁
-将来を楽観できる理由-
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監訳 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志 訳 木村史子
本稿は、「Peter Ridd, Coral in a Warming World: Causes for Optimism Report 55」を、The Global Warming Policy Foundationの許可を得て翻訳したものである。
概要
サンゴのデータ
- 長期で大規模なサンゴ被度について最も信頼できるデータは、グレートバリアリーフのものである。サンゴの被度は年によって大きく異なるが、2022年1985年に記録を開始して以来最高の値となり、2011年の2倍だった。
- グレートバリアリーフの3000のサンゴ礁のうち、失われたサンゴ礁はひとつもなく、どのサンゴ礁も素晴らしいサンゴが生育しいている。年によってサンゴの被度は大きく変動するが、そのほとんどはサイクロンとオニヒトデによる捕食の結果である。
- 世界の他の地域のデータは信頼性が低く、有効なデータは過去20年間のみである。
- 全世界で集計しても、サンゴの被度が大幅に減少していることを裏付けるデータはない。最悪の見積もりでは、2000年から19年の間に7%の減少があったかもしれないとされるが、その差と同程度の誤差があると言われている。さらにデータの自然変動性も10%程度であり、2000年と2019年のサンゴ被度の減少率の差よりも大きい。
- 世界のサンゴ礁の30%を占め、特に多様性に富む「サンゴトライアングル」を含む東アジア海域のサンゴ生物圏のデータは、記録開始以来、統計的に目立ったサンゴの純減はないことを示している。
- オーストラリア以外の地域では、データセットの標準化とランダム化を改善する必要がある。
サンゴの白化現象
- 高水温によるサンゴの白化に関する最も包括的なデータは、グレートバリアリーフのデータである。そのデータからわかることは、全体的な影響は非常に小さいことである。2022年までの6年間に、壊滅的と主張された白化現象が4回発生したにもかかわらず、現在のサンゴ被度は過去最高を記録している。
- サンゴは通常、大きな死滅現象から再生するまでに少なくとも5~10年かかる。2022年にサンゴが記録的な高水準に達したことは、サンゴの大量死に関する報道が誤りであったことを示唆している。このことは、科学機関やメディアの信憑性に重大な疑問を投げかけるものである。
- サンゴの白化現象は、サンゴの体内に共生していた藻類(褐虫藻)を排出することで起こる。それはしばしば、回復するときに別の種類の藻類と置き換わる。このプロセスにより、サンゴは気温の変化に非常に適応しやすくなる。
- ほとんどのサンゴは白化しても死滅しない。
結論としては、世界のサンゴ礁の将来は、少なくとも気候的な温度変化の影響については、一般に考えられているよりもはるかに楽観視できる。サンゴの永久的な大損失に関する多くの主張は、かなり誇張されていることは今や明らかだ。悲観的な集団思考がサンゴ礁に関する情報の大部分を支配している可能性が高い。そして、そのような考え方が、世界のサンゴ礁を観察する際の正確性に影響を及ぼしている。
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