海洋プラスチックごみ問題に挑む企業アライアンスCLOMA


CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)技術統括

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1.はじめに

 終わりの見えないコロナ禍により、マスクや除菌シートなどの衛生用品、生活をサポートする小分け食材、弁当、Eコマースやデリバリー商品の包装材など使い捨てプラスチックの増加とそれに伴う海洋ごみ問題への悪影響が懸念されている。
 地球規模で広がる海洋プラスチックごみ問題の解決には、産官学やNGO、消費者など、様々なステークホルダーの参画が必要だが、産業界においても特定の業種業界に限ることのない多様な連携が求められている。
 このような状況に対応すべく、プラスチックを製造あるいは活用する企業のアライアンス団体CLOMAは活動している。


海中イメージ(iStock)

2.日本におけるプラスチック課題への対応

 日本においては、1955年~1973年の高度経済成長期に大量生産、大量消費、大量廃棄を基本としたライフスタイルや社会システムが定着し、ごみの増大に関連して不法投棄や埋立処分場の不足などが社会問題化した。
 これに対し、1990年代に入るとCO2による気候変動、生物多様性の毀損、水クライシスといった地球規模の環境問題が注目され、プラスチックにおいても海洋流出による景観劣化や漁業被害、波や太陽光で破砕され生じたマイクロプラスチックによる生態系への悪影響、魚貝を介しての健康被害といった課題が認識されるようになった。
 このような背景から、主にごみ対策として整備されてきた廃プラスチックに関する法体系は、2022年4月には、SDGsやパリ協定などグローバル課題にも触れつつ施行されたプラスチック資源循環促進法により強化された。
 また、国の法制度の変質は企業活動にも影響し、旧来の3R対応を付加的に施した商品やサービスの提供から、サステナブルな資源循環を本格的に取り入れたモノづくりへの転換が求められるようになった。
 プラスチックが持つ加工しやすい、複合化しやすい、着色しやすいといった特徴は、多種多様な製品形態や機能を生み出し、プラスチックが多くの産業分野で活用される現代のマーケットを形作ったが、反面、複雑な仕様のままに廃棄される多量のプラスチックを漏れなく処理するためには、視座の高い革新的な技術開発と社会システムの進化が必須となってきたということである。

3.CLOMAの取り組み

 2019年1月、一般消費者向け商品、主に飲料や食品、トイレタリーのサプライチェーンを担う企業が中心となりCLOMAが設立された。
 CLOMAでは、自然環境中にプラスチックを流出させないこと、そのために官民連携で、加えて消費者や社会とともに知恵と技術を結集した日本発のソリューションモデルを構築し、それを世界に発信していくことを活動コンセプトとしている。
 素材、成型加工、製品製造、流通、リサイクルを担う159の企業でスタートしたCLOMAは、設立から1年半後に中長期目標と活動計画からなるCLOMAアクションプランを策定し現在まで活動を進めてきたが、この間、商社やコンサルタント、機械メーカーなどの参画もあり、会員数は2022年末で490を数えるまでになっている。
 CLOMAの活動は、製造や販売、リサイクルといった個々に分断されたステージで、その分野の専門家のみが行うのではなく、多様な企業が参画し、サプライチェーン全体の最適化を以って進めるところに特長があり、さらに検討の幅を広げるため11の自治体にも加盟を依頼している。
 また、海洋プラスチックごみは短期に解決策が期待できるほど単純な問題ではないため、参画する企業が相応の経営資源を投下し継続的に対策検討に取り組む意欲を持続することが必要であり、そのキーポイントとしてビジネス上のメリット創出を重要視している。
 会員には、CLOMA内でのビジネスの展開、さらに、各種プロジェクトを通してのビジネスチャンスを得ることを推進している。
 CLOMAの運営体制は、会員間のビジネスマッチングを推進する普及促進部会、会員の技術ポテンシャル向上をサポートする技術部会、各種の取り組みをグローバルに広めていく国際連携部会よりなるが、これら3部会の基盤活動の上には、「2050年までにプラスチック製品100%リサイクルを目指す」長期目標のもと、「プラスチック使用量削減」、「マテリアルリサイクル率の向上」、「ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装」、「生分解性プラスチックの開発・利用」、「紙・セルロース素材の開発・利用」、「分別回収システムの高度化」といった6つのプロジェクトを設定している。
 これらプロジェクトを通しての主な検討項目は以下のとおりである。
 3Rを通してのプラスチック使用量削減においてはリサイクル視点での商品設計がポイントとなり、マテリアルリサイクルの高度化においてはモノマテリアルの開発と応用、ケミカルリサイクルでは食品汚れ・複合材への対応が重要となる。
 生分解性を考慮したバイオマスプラ、紙といったプラスチック代替素材においては活用に適した市場や販路の開発、分別回収の高度化においては店舗、コミュニティスペース、オフィス等を使った多様な回収方法、リサイクルへの付加価値付与という視点では消費者の価値観とそれに基づく消費行動の変容が挙げられる。
 加えて、これらの活動をサポートするためのDXプラットホームとして、資源循環の各ステージに分散した異種データの統合化、廃棄過程や分別情報、環境影響、安全情報のトレーサビリティ、消費者行動変容のための啓発、教育ツールなどが重要となる。

4.CLOMAの成果と課題

 CLOMAは、2019年に設立されて以降、4年間の活動を通じて、行政やアカデミア、様々な業界でプレゼンスを認知されるようになってきたと心得ている。
 この間、CLOMA会員間においては、BtoBビジネスマッチングを通して、例えば生分解性プラスチックを応用したレジ袋やカトラリーの開発、飲料PETボトルのキャップを転用した化粧品容器の開発、コーティング技術や印刷技術を組み合わせた防湿紙の開発などが行われてきた。
 また、最近では、様々なプロジェクトを通してアライアンスの幅が広がり、動静脈の企業が連携してのトレーサビリティーシステムの開発や、次世代を担うケミカルリサイクルのコラボレーション、自治体を核として複数の競合企業が参画する回収リサイクルの実証テストなどが立ち上がっている。
 今後は、これら現状延長の取り組みを継続的に推進、発展させるとともに、未来のサステナブルなライフスタイルを本質的に実現するサーキュラーな社会システムのイノベーションにもチャレンジしていく計画であり、そのためのプロジェクトチームも編成した。
 引き続き、CLOMAの活動に期待していただきたい。