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発展を阻害する世界銀行

貧困削減に逆⾏する再⽣可能エネルギー偏重


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※ 前回掲載した記事の全文翻訳版です。

監訳 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志 訳 木村史子
(タイトル、Summary 訳 山形浩生)

本稿は、Rupert Darwall, THE ANTI-DEVELOPMENT BANK
The World Bank’s regressive energy policies, The Global Warming Policy Foundation Report 27 ISBN 978-0-9931189-8-2 © Copyright 2017 The Global Warming Policy Foundation
https://www.thegwpf.org/content/uploads/2017/10/Darwall-WB-1.pdf、を、The Global Warming Policy Foundationの許可を得て翻訳したものである。

要 約

 誰でも、安く信頼できる送電網の電力を利用できるようになること(ユニバーサル・アクセス)は、経済発展の最大で最も強力な後押しとなり、世界の貧困者にとって生活の質を一変させるものだ。世界銀行の定められたミッションは、貧困削減となっている。その実現のため、発展途上国の経済社会開発を促進する、熟慮された資金提供を行うのが世界銀行の目的だ。

 その世界銀行は 2012 年にオバマ大統領が指名したジム・ヨン・キム博士が総裁とな ってから、その核心にあるはずの開発ミッションを放棄してしまった。貧困削減より環 境の持続可能性を優先するようになったからだ。2013 年に世界銀行は、石炭火力には資金をつけない方針を採用し、多くの発展途上国にとって最も安く信頼性の高い発電能力となるはずのものに対する投資を実質的に妨害するようになった。世界銀行は石炭火力発電に対し、ほぼ完全に資金をつけないようにしているにとどまらず、高コストで信頼性の低い風力や太陽光技術を優先することで事態をさらに悪化させている。これは世界の貧困者に負担をかけて地球を救おうという、非人道的で見当ちがいのやり方だ。

 富裕国では風力と太陽光が費用を押し上げ、電力供給に必要な発電容量への投資イン センティブを台無しにして、グリッドの安定性を損なっている。こうした国々はすでに電力グリッドを構築し終えている。安定しない風力やソーラーがつくり出す問題にも対処するだけのリソースを持っている。豊かでない国は、そんなリソースを持ち合わせていない。多国間開発銀行が、高コストで運用上も欠陥を持つ技術を押しつけ、開発の足を引っ張り、電化をはるかに高価にするなど無責任きわまる。

 中国以外のアジアとアフリカは、現状では電力の大半を化石燃料から得ている。風力 や太陽光からの電力は、2014年には無視できるものでしかない (それぞれ 1.8%と 0.9%)。だが未発達で脆弱な電力グリッドに、天候まかせの発電容量を大量につなげばグリッドが損傷し、それを安定化させるための追加投資が必要となる。原価割れでの電力販売―多くの発展途上国で慢性的に見られる―は、固定費が高く限界費用ゼロの発電が導入されることで悪化する一方であり、電気を維持するために必要な発電設備への投資を惹きつけるのはなおさら困難となる。

 世界銀行はこの方針を、温室効果ガスを世界的に排出削減したいからと言って正当化す る。だが発展途上国の貧困者たちが消費する電力はきわめて少ない。一人当たりの石炭 消費などキログラムやポンド単位で測れてしまう規模でしかない (バングラデシュならオンス単位で測れる)。当の世界銀行自身が、グリッドを世界の貧困者へと延伸しても、追加の温室効果ガス排出など「目に見える差は生じない」と認めている。それなら、世界銀行の反石炭/再生可能エネルギー優先政策は、道徳的にも経済的にも擁護できない。人為的地球温暖化の可能性を懸念する人々にとって、世界の発展途上国のエネルギー不足の人たちに電気を送ることは、何一つ問題ではない。

 世界銀行自身の分析も、風力と太陽光による発電の変動性が引き起こす追加費用と、必要とされるグリッドインフラの追加費用をはっきり示している。この分析にもかかわらず、世界銀行は当時国連事務総長だった潘基文と「独自のパートナーシップ」を結び、2011 年に「万人のための持続可能エネルギー」(SE4ALL) イニシアチブを開始した。これは 2030 年までの世界エネルギーにおける再生可能比率を二倍にするという恣意的な目標を掲げている。世界銀行としては大失態だ。潘基文自身の数字によれば、ユニバーサル電力アクセスは年間 500 億ドルというお値段となる。再生可能エネルギーは年額 5000 億ドルであり、加えて省エネのためにさらに年額 5000 億ドルかかる。客観的な分析者であれば、この数字を見た瞬間にこんな試みは止めたはずだ。

 世界銀行が自分の中核の開発ミッションを裏切ったのは、その株主や援助対象国からの圧力だけのせいではない。エネルギーミックスにおける再生可能のシェアを倍にする という潘基文の狙いを支持することで、世界銀行は国連総会よりはるかに踏み込んだ決 断をしている。国連総会は 2013年3月の決議で、再生可能技術はまだ経済的な妥当性 がないと指摘しているのだ。2015年9月に合意された 2030年SDGも、SE4ALLの再生可能エネルギー目標を薄めている。2015年12月パリ合意の文言を各国政府が最終的に固めたときには、フランスの議長が示した草案から再生可能エネルギーへの言及を削除したのだった。

 発展途上国の指導者たちは、西側諸国を豊かにしたエネルギーを自分たちには与えな いという先進国の明らかな偽善ぶりを非難している。世界銀行とIMF に対する率直な物言いで、ナイジェリア財務省ケミ・アデオソンは 2016年10月にこう述べた:

 ナイジェリアには石炭があるのに電力問題がある。それなのに、グリーンではないからといって邪魔されてきた。これはいささか偽善でしょう。西側の工業化はまるごと石炭エネルギーによるもので、それが彼らの使ってきた競争優位なのに、こんどアフリカが石炭を使いたいとなるとその連中が、おやおや! きみたちは太陽光と風力(再生可能エネルギー)を使いなさい、なんて言い出しますが、これはきわめて高価なエネルギーで、自分たちは何百年も環境を汚染してきて、それがこんどはアフリカが石炭を使いたいとなると、それを否定するわけですか注1)

 アメリカはいまや世界銀行の手綱を引いて、世界の貧困削減というミッション、特に貧 困者の数がきわめて多いところに専念させようとしている。各国が化石燃料にアクセスしもっと効率的に使ってほしいと願っている。開発ポテンシャルと貧困削減を最大化するためには、世界銀行の株主国はさらに踏み込んで、世界銀行に反開発的なSE4ALLイニシアチブから手を引かせ、再生可能エネルギー目標を廃止させるべきだ。世界銀行の支援する再生可能エネルギープロジェクトがグリッドの経済性を損ね費用を増やすようなことはあってはならない。

注1)
Nduka Chiejina, ‘Coal for electricity: Adeosun blasts World Bank, IMF,’ The Nation, 5 October 2016.

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発展を阻害する世界銀行 貧困削減に逆⾏する再⽣可能エネルギー偏重(PDF)

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