オリンピックに向けて旅行者が快適に過ごすための公共投資
― 街にゴミ箱の設置はいかが ―
丸山 晴美
消費生活アドバイザー
寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。我が家はなるべく暖房を使わないように、日中の太陽の熱を部屋に取り込んでおき、16時頃には厚手のカーテンをしてなるべく窓から熱が逃げないようにしています。そして、夜は入浴後すぐに洗濯を残り湯でして、浴室のドアを開放し湿気を部屋に入れるようにして乾燥対策をしています。これも機密性が高い狭い部屋に住んでいるからこそ、できることかも知れません。そのお陰で冬の光熱費は、ガス代が少し高くなったくらいで電気代、水道代は安くなりました。
昨年の春に不要品を大胆に処分したお陰で狭い部屋でも快適に過ごし、もろもろかかるコストも抑えられています。最近は「無買日」(むばいび)というお買い物をしない日を作って家にあるもので済ます生活をしています。意外と買い物をしなくても家にあるものでやりくりできるものだと思いました。もちろん冷凍庫には大パックで買った挽き肉の小分け(100g)分や小分けした鶏むね肉といった素材はあるので、それらを解凍しながら冷蔵庫の野菜などと組み合わせて食事を作っています。
前置きが長くなりましたが、街を歩くと海外からの旅行者を多く目にするようになりました。観光地へ行けばなおのこと、国内なのに異国かと錯覚を起こすくらい多言語が飛び交います。また、都内の家電量販店や百貨店の免税カウンターは長蛇の列です。私のように無買日を作って節約していると消費は落ち込みますが、こうした旅行者によって消費が支えられている以上、より快適な街づくり、公共施設作りも必要ではないかと思います。また、コンビニエンスストア・ローソンの都心にある一部店舗では中国や韓国製に加え、ハラル認証の飲料など品揃えをするようになりました。海外からの旅行者や滞在者のニーズに合わせた品揃えです。他にも海外からの旅行者向けなどにFree Wi-fiの設備なども進んでいます。
しかし、まだまだ不便なものもあります。そのうちの一つが地下鉄です。都心の地下鉄は迷宮のようです。またエスカレーターやエレベーターも少なく大きなスーツケースを持った旅行者が階段を下りている姿を見ることもめずらしくありません。私自身が台湾の台北市へ旅行した時は、エレベーターやエスカレーターが多く設置されており、重いスーツケースを持って階段を下りることはまずありませんでした。また、主要駅では誘導員がおりスーツケースを持っていると、エレベーターのある方向を教えてくれるので、快適な移動ができました。
あとは、国内で生活している人はあまり不便と感じないかも知れませんが、ゴミ箱です。外国人旅行者が日本に着いてまず驚くのが施設や道路の綺麗さだそうです。ゴミがほとんど路上に捨てられていなく、綺麗な状態で保たれているからだそうです。しかし、それも一部ではないかと思います。渋谷のセンター街などを歩くと、路上にゴミ箱は見あたりませんし、コンビニでもスペースの問題上、道路沿いにゴミ箱を置いているところはそう多くはありません。ゴミをゴミ箱に捨てられないのであれば、ゴミは持ち帰ることになります。私のように国内で生活していればそれほど気にならないことも、海外からの旅行者にとってはストレスになるでしょう。また、駅や路上といった公共の場にゴミ箱が少ないために、せっかくリサイクルできるはずのゴミもできなくなっているのではないのでしょうか。国内ではプラスチック・ストローの禁止やレジ袋の有料化の動きがあります。それも取り組みとしては大切ですが、こうした増え続ける海外からの旅行者が快適に分別できるゴミ箱を設置することも大切ではないかと考えます。
ちなみに筆者が数年前に中国の上海へ行った時の写真を見て戴くと、街には分別用のゴミ箱が設置され、リサイクルできるものとそうでないものに分けられています。
こちらも上海の南京路の風景ですが、ゴミ箱が短い間隔で設置されていることがわかります。そのお陰か、上海の道路はきれいに保たれていることもわかります。
今後東京オリンピックの開催もあり、更に旅行者は増えるでしょう。しかし、テロ対策で街のゴミ箱はどんどん撤去され今後も撤去の方向へ進むことが考えられます。国内外からの旅行者だけではなく、生活者も快適な国内での消費とゴミの分別、リサイクルを進めるために、公共のゴミ箱の設置は必須だと考えます。安全でリサイクルしやすいゴミ箱をぜひ街に増やして欲しいと思います。これも一つの公共投資と考えれば高いものではないはずです。