中国電力水島発電所2号機でのアンモニア混焼試験について

事業用微粉炭燃焼ボイラではじめての実施


中国電力株式会社 エネルギア総合研究所 総合エネルギー技術グループ マネージャー(主席研究員)

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1.はじめに

中国電力水島発電所2号機

 地球温暖化が大きな問題となっており、その原因物質である二酸化炭素を大幅削減する手段として水素の普及が推進されている。
 この水素を輸送貯蔵するための主な手段としては、液体水素、有機ハイドライド、アンモニアの3種類がある。
 まず、液体水素は水素を超低温(沸点:マイナス253℃)で液化して輸送貯蔵し、液化水素を気化させて消費するものである。次に、有機ハイドライドは芳香族化合物に水素を結合させた水素化物にして輸送貯蔵し、水素分を分離したうえで水素として消費するものである。アンモニア(水素+窒素)については、僅かな低温(沸点:マイナス33℃、プロパンと同様)で液化して輸送貯蔵し、アンモニアを直接消費、もしくは、水素分を分離したうえで水素として消費するものである。
 その中ですでに発電所において排煙脱硝装置で使用しており、期待の大きいアンモニアについて当社の取組みを紹介する。
 中国電力においては、平成29年7月3日から9日にかけて石炭火力発電である水島発電所2号機でアンモニアを直接混焼する試験を実施し、発電に伴い発生する窒素酸化物などの環境影響等、アンモニア混焼について問題がないことを確認した。また、試験で得られた知見を特許出願した。
 この試験は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)注1)」のうち、「エネルギーキャリア注2)」に関する委託研究課題「アンモニア直接燃焼」の一環として、JSTから受託して実施したものである。

2.混焼試験について

 当社委託研究課題「アンモニアの発電利用に関する事業性評価」において、机上検討を進める中で、事業性評価の内容充実ならびに精度向上を図るため、既存発電所でのアンモニア混焼試験を実施することとした。

(1)設備計画
 微粉炭燃焼ボイラで、日本で唯一、LNG燃焼設備を設置している水島発電所2号機を選定した。
 アンモニア設備は既設脱硝用に設置している設備2系統のうち1系統からバーナまで仮設配管を布設した。

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(2)試験条件

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(3)試験結果
 燃料として利用したアンモニアについて、ボイラ内で全て燃焼させることができ、発電に寄与したことを確認するとともに、発電に伴い発生する窒素酸化物などによる環境影響についても、問題がないことを確認した。

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 さらに、混焼率については、当初、発電機出力を15.5万kWで運転することを前提に、既設アンモニア設備からアンモニアを最大限供給し、約0.6%混焼させることとしていたが、天候影響により、発電機出力を12.0万kWに下げたことで、結果として約0.8%(1,000kW相当)まで混焼させることができた。
 これに伴い、今回試験を行った燃焼方法において、一定の条件の下では、窒素酸化物濃度が下がる傾向にある、という新たな知見が確認できたことから、本知見について特許を出願した。

3.結言

 今回の試験を通じて、環境に大きな影響を与えることなく、アンモニアが燃料として発電に寄与することを確認できた。今後、さらに混焼率を上げることも可能であり、石炭火力発電のCO2削減に大きく貢献できると考えている。
 中国電力は、引き続き、火力発電所の環境負荷低減やエネルギーの効率的な利用に貢献していく所存である。

注1)
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP):内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。
注2)
エネルギーキャリア:エネルギーの輸送・貯蔵のために用いられる物質。水素エネルギーについては、液化水素や有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)、アンモニアなどがあり、それぞれについて研究が進められている。