省エネ型CO2回収設備の概要と展開
~高純度・低熱消費型CO2化学吸収プロセス~
萩生 大介
日鉄エンジニアリング株式会社
3.商業設備ESCAP®の開発と展開
3.1 商品化へ向けた取り組み
以上紹介した結果より、本プロセスは商業適用可能であることを確認した。一方、本プロセスを、当初想定していたCCS(Carbon dioxide Capture and Storage;二酸化炭素の回収・貯蔵)以外の用途、例えば飲料用等の一般産業用途に用いる場合、非常に高い製品品質(高純度かつ低不純物濃度)が求められる。当社はこれらに対応するため、
- ①
- 原料ガス中の不純物を除去するための前処理設備及び製品CO2ガス中の不純物を除去するための後処理設備
- ②
- 原料ガスの性状変動(CO2濃度や不純物濃度の変動)に対し安定かつ安全に設備の運転制御を行うシステム
- ③
- 本プロセスにおける最適な設備設計が可能なプロセスシミュレーション技術を独自技術として元のCO2分離回収設備に付加し、“ESCAP®”として商品化した。
3.2 商業機の紹介
ESCAP®の商業1号機は2014年に北海道・室蘭製鉄所構内に、飲料等を含む一般産業用途向けに建設された(写真2)。製鉄所の熱風炉燃焼排ガスをCO2回収源とする化学吸収法による商業設備としては、世界で初めてのものである。
2016年には商業2号機を愛媛県・新居浜市に建設することが決定した。石炭火力発電の燃焼排ガスをCO2回収源とする、化学吸収法によるCO2分離回収設備としては、日本で初めての商業設備となる。回収されたCO2は、ガスのままオンサイトで近接する化学工場へ送られ、化学副原料として利用される予定である。
3.3 ESCAP®の展開
ESCAP®の技術は、第5図に示すように、上述のような産業用途やCO2-EOR (CO2-Enhanced Oil Recovery: CO2圧入による石油増進回収法)等のCO2利用用途のほか、混合ガス中(バイオガス等)のCO2を不純物として除去し、製品の純度を上げて都市ガスやその他化学原料に利用する工程にも適用が可能である。
4.おわりに
省エネ型CO2回収技術として、化学吸収プロセスの技術開発の内容、その成果と商品展開について紹介した。本技術が鉄鋼業におけるCO2削減やその他産業界におけるCO2利用・除去の分野に広く活用されることを期待したい。
最後に、省エネ型化学吸収法の開発はNEDO/COURSE50プロジェクトにて実施されました。この場を借りて改めて関係者・関係機関に感謝申し上げます。